欧米旅行をLCCで安く 日航、「中長距離」参入の勝算

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   日本航空が国際線の格安航空会社(LCC)を設立すると発表した。成田空港を拠点に「アジア・欧米などの中長距離国際線」に2020年夏ダイヤで就航するという。中長距離の国際線LCCはこれから競争が予想される分野で、日航は先手必勝を目指すが、LCCのビジネスモデルがどこまで通用するか、疑問の声もある。

   日航の赤坂祐二社長は2018年5月14日の記者会見で「近年、お客様の旅行に対する価値観が多様化している。今後、成長が見込まれる中長距離の国際線LCC事業を展開し、国内外のお客様の新たな選択肢となることで、訪日外国人の増加促進の一翼を担っていきたい」と力を込めた。注目すべきは、日航がLCCに本格参入するだけでなく、欧米を含む長距離路線で低価格帯に挑戦すると表明したことだ。

  • 会見した日航の赤坂社長(左)
    会見した日航の赤坂社長(左)
  • 会見した日航の赤坂社長(左)

「LCC元年」は2012年

   厳密な定義はないが、一般に航空業界では近距離が飛行時間3~4時間程度。中距離が10時間未満で主流は6~8時間程度。日本で近距離は国内線のほか中国、韓国など近隣のアジア諸国が中心。中距離はタイ、シンガポール、ハワイなどが含まれる。長距離は10時間以上で、北米や欧州が対象となる。中距離に当たるオーストラリアやハワイなどと日本を結ぶ海外のLCCは存在するが、欧米と日本を結ぶ長距離LCCはまだない。

   LCCは大手航空会社に比べて3~7割程度の低価格運賃が魅力で、日本では新規参入が相次いだ2012年が「LCC元年」とされる。現在では日本発着の国際線旅客の約2割をLCCが占めるまでに成長した。しかし、これはあくまで近距離を中心とするLCCのビジネスモデルが成功したからだ。

   LCCはボーイング737やエアバスA320などの小型機に目いっぱい乗客を乗せ、A地点とB地点の間を効率よく何度も往復し、コスト削減を図ってきた。機内が多少狭くても、機内サービスを簡素化しても、飛行時間が短い近距離ならさほど問題にならなかった。

   しかし、これが中長距離となると事情が異なる。航続距離を稼ぐため機材は大型化せざるを得ず、機内食などの提供も必要。A地点とB地点を往復する頻度も下がり、コスト削減効果は近距離ほど期待できない。世界的に中長距離のLCCが近距離に比べて少ないのはこのためだ。

期待寄せる「機材」

   日航の赤坂社長も記者会見で「長距離のLCCは短距離とはまったく違う。近距離を多頻度で運用するのと長距離は技術的に大きな違いがあり、かなり難しいと思う」と認める。赤坂社長が言う「技術的」とは、飛行機を飛ばすための設備やシベリア上空などを通過する際の高度なオペレーション技術などを指し、LCCがこれらの課題を克服するのは「そう簡単なことではない」という。

   しかし、日航には勝算もあるようだ。日航がLCC子会社で導入するのは燃費性能に優れる最新鋭のボーイング787-8型機だ。赤坂社長は「長距離に最も適しているのが787。機内の快適性も高い。(同機を多数所有する日航は)787のノウハウが蓄積され、この機材を使って中長距離LCCができる確信を深めている」と胸を張った。

   中距離路線のLCCをめぐっては、ANAホールディングス(HD)も傘下のピーチ・アビエーションとバニラ・エアを、2019年度末をめどに統合して参入する計画を明らかにしている。海外のLCCも日本に中長距離路線を就航させる可能性がある。

   日航が新たに参入するLCCは他社との競争だけでなく、同じグループ内の日航のエコノミークラスとの価格競争もある。LCCは安さを武器に、これまで飛行機を利用しなかった観光客らを取り込んだとされるが、日航のLCC戦略が吉と出るか凶と出るか、今から注目される。

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