日本大学アメリカンフットボール部の「危険タックル」問題をめぐり、後手に回り続けている日大の対応を疑問視する声が多い。
なぜ、日大はそんな対応に終始してしまうのか。リスクマネジメントの専門家に取材すると、日大が「世論」を置き去りにしている実態が垣間見えた。
「堂々と公に発信するべきだ」
まず事の経緯を簡単に振り返ろう。6日の日大と関西学院大学の定期戦で、日大の守備選手が関学の選手に背後からタックルし、全治3週間のけがを負わせた。
関学大は12日の会見で、日大に反則行為への見解やタックルを受けた選手、保護者への謝罪を求める抗議文を送付したと発表。15日に回答文書を受け取った。
だが、関学アメフト部の小野宏ディレクターは17日の会見で「回答書には、本件に関する具体的な事実・経緯など、チームとしての見解が示されていない」などと指摘。「当該選手がなぜああいうプレーしたか、真相究明が必ずなされるべきであり、我々もきちんと納得できるまで解決しません」と、糾弾した。
こうした日大の対応は「危機管理としては『まずかった』と言えます」――。リスクマネジメント論を研究する関西大学社会安全学部の亀井克之教授は、18日のJ-CASTニュースの取材にそう指摘した。
「普通はありえないプレーで相手チームの選手を負傷させたわけですから、しっかりと先方の心情を慮らなければなりませんが、今のところ誠意を感じるものではありません」
一体、どういうことか。具体的な理由としては、責任者の日大・内田正人監督が一向に情報発信をしていない点を挙げる。
内田監督が当該選手にタックルを指示したのかどうかをめぐり、各メディアではさまざまな証言が飛び出している。だが本人は一切、何も語らないまま。関学は既に2度、記者会見で説明している一方、日大は1度も会見を開いていないのだ。
「抗議文に対する回答書に加え、記者会見を開いて、説明するべきでしょう。このような経緯で反則行為が起きてしまいましたなどと、堂々と公に発信するべきです。そうしないから、雲隠れしているとか、何か後ろめたいことがあるのでないかとか、解釈されてしまうのです」
日大は関学への回答書で「指導者による指導と選手の受け取り方に乖離(かいり)が起きていたことが問題の本質」と説明していたが、亀井氏はここにも問題点があると指摘。「監督がこのような指導をし、選手がこのように受け取った。だからこのような『乖離』が生まれた、と具体的な説明をしなければなりません」と持論を述べた。