国会もいっそ、「プリキュア」に助けを求めてみては――2018年5月15日の衆院本会議で、女児向けアニメの人気シリーズ「プリキュア」を引き合いに、野党が安倍政権を批判する珍しい場面があった。
質疑に立ったのは、立憲民主党の桜井周・衆院議員(47)だ。小学生の娘がいるという桜井氏は、春休みに「プリキュア」シリーズの劇場版「プリキュアスーパースターズ!」を一緒に見に行った――と、いきなり語り始めた。
子どもたちがウソバーッカになると「懸念」
「プリキュアスーパースターズ!」はシリーズ24作目の映画として3月17日に公開、世界を「嘘だらけ」にしようと暴れる怪物「ウソバーッカ」に、正義の味方であるプリキュアたちが力を合わせて挑む、という内容だ。以下、ネタバレになるが、実はこのウソバーッカ、元々普通の少年だったが、他人に「嘘をつかれた」(と思い込んだ)ことをきっかけに、悪に染まってしまった、と設定されている。
「これを、子ども向けアニメの作り話と笑い飛ばすことが出来ないのが、わが国の政治の現状です。なぜなら、安倍内閣が嘘ばっかりだからです」
桜井氏は直前の質問で、加計問題などをめぐる政府の姿勢を批判していた。「国会において大臣が、そして政府高官が公然と嘘をつく現状では、豊かな人間性も道徳性も身につかないのではないですか? 嘘をつかれた子どもたちが映画『プリキュア』のようにウソバーッカになってしまうのではないかと懸念します」と続けると、議場には笑いが起きる。
「そこで文部科学大臣にお尋ねします。安倍内閣の多くの嘘が子どもたちの育ちに与える悪影響について、文部科学大臣はどのように把握されて分析されていますか?」
林芳正文科相は仏頂面のまま、「内閣としては(中略)ひとつひとつ着実に取り組み、成果を上げることを通じて国民から信頼される行政に取り組んでいきたいと思います」とのみ答え、残念ながらプリキュアの話題に乗ることはなかった。
過去には「大臣はピカチュウ」談義も
発言はニュースサイト「ガジェット通信」などが報じ、大手まとめブログでも拡散されるなど、ネット上で話題になった。もっとも、ツイッターの反応は「プリキュアおじさんが国会にもいるんですねぇ」「国会でプリキュアを根拠に話をするって恥ずかしくないですかね」などといささか冷ややかだ。
ところで、国会で「プリキュア」のようなアニメや特撮作品を引き合いに、政治についての議論が交わされるのは、これが初めてではない。
たとえば2004年には五十嵐文彦衆院議員が時の小泉純一郎首相(以下、肩書きはいずれも当時)に、巨大な日本郵政公社を「ウルトラマン」にたとえて、
「ウルトラマンを人間に変身させようというわけですが、ウルトラマンのサイズのまま、身長40メートル、体重何万トンというんですが、そのまま人間になられても困る」
と民営化に際しての適切な事業分割を求めた。
最近では2016年、大西健介衆院議員が評論家・常見陽平さんの著書を引用する形で、
「常見陽平さんという方が『僕たちはガンダムのジムである』という本を書いているんですね。私はガンダム世代なので、これはすとんとくるんですけれども......」
と、「普通の人」のための働き方改革を「ガンダム」にたとえて論じた例がある。
変わったところでは1999年、山本孝史参院議員が、年金問題について丹羽雄哉厚相に質す中で、こんな珍言を残した。
「私は、丹羽大臣は、今アメリカで大フィーバーしているポケモンのような感じで思っているのです。ピカチュウじゃないかというぐらいに私は期待を申し上げている。ぜひ頑張ってください」