日立とソニーで「株価」明暗 両社、過去最高益なのに...

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   2018年3月期連結決算の発表はピークを越え、ニッポン企業は全体として2桁増益となったようだ。円安傾向などを追い風に特に製造業の復活が目立った。

   製造業の復活と言えば、電機産業。2つの大きな柱である日立製作所とソニーはともに決算で復活をアピールしたが、株式市場の反応は「日立大幅高、ソニー急落」で明暗が分かれた。

  • 「日立大幅高、ソニー急落」で明暗が分かれる (画像はイメージ)
    「日立大幅高、ソニー急落」で明暗が分かれる (画像はイメージ)
  • 「日立大幅高、ソニー急落」で明暗が分かれる (画像はイメージ)

日立、各種のコスト削減策が奏功

   日立の2018年3月期は売上高が前期比2.3%増の9兆3686億円、営業利益は21.7%増の7146億円、純利益は45.2%増の4909億円と文句なしの増収増益だった。しかも、営業利益は過去最高を更新した。

   また、利益の額の多さだけでなく、売上高に対してどれだけ効率良く稼いでいるかを示す「営業利益率」が7.6%まで上がり、2019年3月期を最終年度とする中期経営計画で掲げた8%も目前となった。海外での大型プラント受注をやめるなどの不採算事業からの撤退や、各種のコスト削減策が功を奏している。中核事業が10%を超える米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスにはなお及ばないものの、射程にはとらえたと言っていい数字で、株式市場はこれについても好感したようだ。

   一方のソニー。売上高は前期比12.4%増の8兆5439億円、営業利益は約2.5倍の7348億円で1998年3月期以来、20年ぶりに過去最高を更新した。純利益は約6.7倍の4907億円で、こちらも10年ぶりに過去最高だった。スマートフォン向けの画像センサーといった従来からの得意分野が伸張したほか、音楽、映画といったコンテンツビジネスが堅調。ゲーム事業もプレイステーション4の販売台数はピークを過ぎたが、オンラインゲームへの課金で稼ぐビジネスモデルが確立した。増収増益のレベルも高く、リーマン・ショック後の長い低迷から明確に抜け出したと言える内容だった。

国内外で分析に差

   日立、ソニーともに営業利益が過去最高を更新したわけだが、両社が4月27日に決算を発表した後の初の取引日となる5月1日の株式市場の反応ははっきりと分かれ、日立が買われてソニーが売られる展開となった。日立は一時、855.8円と前営業日比6.8%高まで伸び、終値は850.3円だった。大型連休明けの週も株価は崩れず、800円台後半を維持した。しかし、ソニーは5月1日の株価が「窓をあける」(前営業日安値より当日高値が低い)大幅な下落を記録。この1日終値は前営業日比6.1%安の5073円となり、大型連休明けの週はやや持ち直しているものの、連休前の5400円台は遠いままだ。

   利益がともに過去最高を更新しながら日立、ソニーの株価の明暗が分かれたのは、2019年3月期の業績予想が影響したようだ。ソニーは売上高が前期比2.9%減の8兆3000億円、営業利益は8.8%減の6700億円と予想した。一方の日立は売上高が0.3%増の9兆4000億円、営業利益は4.9%増の7500億円と見込んだ。さらに、株式市場が見逃さなかったのは18年1~3月期のソニーの実績だ。営業利益は半導体の落ち込みなどが響き、前年同期比38.6%減の412億円と振るわなかった。

   ソニーの決算発表を受け、国内系証券アナリストからは「収益のけん引役がハードからコンテンツへ変化した」(SMBC日興證券)など、好意的な見方が多かった。他方、海外系証券アナリストは概して辛口で、UBSやJPモルガンが先行き不安から目標株価を引き下げるなど厳しい視線を向けたことも投資家の判断に影響を与えたとみられる。ソニーの復活については織り込み済みの側面があっただけに、悪い方の材料に投資家が敏感に反応したとも言えそうだ。

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