「国際信州学院大学」なる大学の職員が貸し切り宴会の予約をドタキャンし、キャンセル料金の支払いも拒否したと、2018年5月13日夜、会場となるはずだったうどん屋「蛞蝓亭」がツイッターで「告発」した。飲食店のドタキャン告発はツイッターで注目を集めやすく、この告発も例にもれず多数リツイートされ、心配の声が寄せられたほか、大学側への怒りの声が上がった。
しかし、この大学とうどん屋は架空の存在という、いわゆる「釣り」ネタである。それが分かりはじめると、ネタにかけた仕込みの規模の大きさへの驚きや、ネットリテラシーを問う一石だと評するなど様々な反応が上がった。一方で、架空の事件をでっち上げ、多くの人々を騙したことは悪質であり、中には「違法」ではないか、と指摘する声もあり、賛否両論の状態になっている。実際に罪になり得るのだろうか?
本当に「被害者」はいないのか
国際信州学院大学は18年1月下旬ごろに5ちゃんねるの「ニュー速VIP」に立った、受験シーズンに合わせて架空の大学を作り、受験生を騙す、という趣旨のスレッドで生まれた。
公式サイトに加え、ツイッターには学生やサークル、そして今回のうどん屋のような関連アカウントも複数作られ、あたかも実際に存在するかのように振る舞っており、その仕込みの規模は小さいものではない。しかし、公式サイトにはおかしな点が多数あり、出願ページに行くと「釣り」であることが明かされるなど、ジョークサイトとして分かるように作られている。
多くの人々が騙されることになった今回の架空のドタキャン騒動だが、14日のJ-CASTニュースの取材に対し、弁護士法人・響の坂口香澄弁護士は、こうしたフェイクニュースが,「特定の個人や団体の名誉を毀損したり,業務を妨害したりと,何らかの法益を侵害した場合」、民事・刑事上の責任を問われることもありえるとコメントした。
今回の「ドタキャン」騒ぎ、また「国際信州学院大学」を名乗っての一連の「釣り」には、「被害者」がいないようにも見える。ネット上でも、この部分を面白がる声が大きい。しかし坂口弁護士は、
「厳密にいうと被害者がいないわけではありません」
と話す。
「『国際信州学院大学』のホームページに利用されている写真は、他の大学の写真を使用していることが指摘されています。私的に撮影した写真の一枚であっても著作物として著作権法によって保護されることは十分にありえます。これを他人が無断でネット上に転載すれば著作権の侵害になり、民事上・刑事上の責任が生じます(もっとも、著作権法違反は親告罪なので、著作者、すなわち転載もとの写真の撮影者や権利者が告発しない限り罪には問われません)」
と、著作権の観点からは、権利者が声を上げた場合は問題になる可能性があると指摘した。