長崎地銀統合問題、金融庁と公取委のにらみあい出口見えず

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   長崎の地銀再編をめぐる金融当局と公正取引委員会の対立が一段と深まっている。金融庁の有識者会議は2018年4月、再編に反対している公取委をあからさまに批判する異例の報告書を公表。対する公取委は、地銀に対し経営統合をやめさせる「排除措置命令」を出すことも辞さない構えだ。

   当事者の地銀は地域でのシェアを低下させるため、他行への債権譲渡に乗り出したが、難航必至で打開策は見えない。

  • 長崎地銀統合めぐり、金融庁と公取委の対立は続く (右のシンボルマークは公正取引委員会ホームページより)
    長崎地銀統合めぐり、金融庁と公取委の対立は続く (右のシンボルマークは公正取引委員会ホームページより)
  • 長崎地銀統合めぐり、金融庁と公取委の対立は続く (右のシンボルマークは公正取引委員会ホームページより)

公取委事務総長が報告書に反論

「経済産業構造の変化に応えられていない」

   地域金融機関のあり方を議論する金融庁の有識者会議が4月11日にまとめた報告書は、公取委を痛烈に批判する文言が明記されていた。

   報告書が指弾するのは、親和銀行(長崎県佐世保市)を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀行(長崎市)の経営統合計画が、公取委の反対で膠着状態に陥っていることだ。

   報告書は、公取委の「統合すれば地域で競争がなくなり、貸出金利の上昇などで融資先が不利益を被る」との主張を「可能性は低い」と真っ向から否定。人口減少で経営環境が厳しくなる中、長崎県を含む23県で将来、地銀1行でも存続は難しくなるという衝撃的な分析結果を示し、「経営余力があるうちに統合を認めるべきだ」と強調した。

   有識者会議を通じてとはいえ、金融庁が公取委の政策にここまで踏み込んだ批判をするのは異例のことだ。統合計画の公表から約2年たった今も、公取審査が一向に進まないことへの苛立ちがにじむ。

   こうした批判に対し、公取委はむしろ態度を硬化させている。幹部は、23県で地銀が1行も存続できないとした有識者会議の分析結果について「極端過ぎて、お話にならない」と不快感を隠そうとしなかった。

   山田昭典事務総長も4月18日の定例会見で、報告書に「疑問がある」と反論。翌週25日の会見でも「競争上の懸念があることは以前から(ふくおかFGと十八銀に)伝えている」と反対姿勢に変わりがないことを強調した。

官房長官「政府全体で議論する必要がある」

   公取委は、企業の経営統合で競争上の問題が解消されないと判断した場合は、最終的に統合をやめさせる「排除措置命令」を出すことができる。今回の地銀再編についても、公取委の内部から「排除措置命令も視野に入れる」との声が出始めた。ただ、公取委が過去に命令を出したケースはなく、公取審査に通りそうにない場合、これまでは企業側が統合を自主的に断念している。公取委は今回も排除措置命令をちらつかせながら、ふくおかFGと十八銀による統合断念を待つ戦略ともいわれる。

   政府内で深まる対立をどうするのか。菅義偉官房長官は4月12日の記者会見で、地域金融機関のあり方について「政府全体で議論する必要がある」と発言した。金融庁の森信親長官は菅官房長官の信任が厚く、関係者の間では「官邸が金融庁の意向をくみ、調整に乗り出すのではないか」との見方も出ている。

   ただ、森友学園を巡る公文書問題などで安倍政権が大揺れに揺れる中、官邸も他の問題に割く余力が乏しいのが実情だ。ふくおかFGと十八銀は連休明けから、県内のすべての融資先に対し、借り入れを別の銀行に移すことが可能かどうか本格的な調整に入っている。県内の融資シェアを引き下げ、公取委の統合容認を引き出したい考えだが、融資先にとっても取引銀行を変えるのは大きな決断となるため、「強制できる話ではない」(地銀関係者)とあって、簡単には進みそうにない。こじれにこじれた統合問題は、さらなる長期化の様相を見せつつある。

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