欠かせない「株主の理解」
今回、米系格付け会社のムーディーズ・ジャパンは5月9日、武田の発行体格付けを「A1」から「A2」に1段階引き下げたが、これは過去の買収や直近の業績などを受けてのことで、シャイアー買収発表を受け、さらに格下げ方向で見直すとしている。
今回の買収の資金確保のため、武田が新株発行を盛り込んでいるのも不安材料だ。武田の時価総額、この間の株価下落もあって3兆円台半ばになっており、株価の動向によっては、現状に匹敵する新株の発行が必要になるとされる。株式の価値が希薄化する懸念があるわけだ。確かに、シャイアーは2017年12月期の営業利益が2600億円と、武田の1500億円(17年3月期)を上回っており、1株利益は株数が2倍になっても目減りしない計算にはなるが、将来的にシャイアーの成長性を疑問視する声もある。
実際、市場の反応は冷ややかで、買収交渉大詰めで金額膨張の情報が広がる中、4月25日には東京株式市場で武田の株価は一時4398円をつけ、年初来安値を更新。その後は4500~4600円を挟む展開で、年初来高値の6693円を2000円以上下回る水準だ。
株主総会で買収への同意を得るために、株主の理解が欠かせない。日経新聞の社説(5月9日)も、「今回の買収が『高値づかみ』ではなく、財務の健全性を引き続き維持できるという見通しを経営陣は分かりやすく発信する必要がある」と、注文している。