借金の膨張
シャイアーは、血友病など希少疾患の治療薬や血液製剤に強みがあり、開発が最終段階にある新薬候補も複数持ち、遺伝子治療の分野も得意としている。消化器系疾患、がん、中枢神経系疾患という武田の三つの重点領域に加え、近い将来、新たな収益の柱になりうるのが大きな魅力といえる。
販売面でも、シャイアーは世界最大市場の米国で強いほか、世界100か国以上に販売網を持つ。日本中心にアジアに強い武田との地域補完性が高いと判断しており、海外の販路拡大を狙う。
このほか、通常のM&A同様、コスト削減効果を見込むのはもちろんのことで、合併3年後に年14億ドル(約1500億円)節減できると弾いている。
懸念もある。まず借金の膨張だ。今回の買収は、3月に発覚した時手では、シャイアーの当時の時価総額が4兆円あまりだったことから「4兆円買収」「5兆円買収」と言われたが、その後の交渉で7兆円近くに膨らんだ。それでも、武田がこれ以上出せないとして考えていた額よりは少なくて済んだと言う。とはいえ、武田は2017年9月末時点で1兆1000億円の有利子負債を抱え、これに今回の買収のための借入3兆円が加わる。さらにシャイアーも2兆円程度の負債があるとされ、買収後の負債は単純計算で6兆円程度まで膨らむ恐れがある。