米大リーグが1998年以来の「エクスパンション(拡張)」に向かって動きを強めている。マンフレッド・コミッショナーが、国際戦略強化の一環として現在の30球団から32球団に増やす意向を表明したもの。
発言を報じたスポーツニュース専門の米ウェブサイト、CBSスポーツによると、メキシコ市とカナダ・モントリオールが有力候補地とされる。
コミッショナーが意欲
マンフレッド・コミッショナーの発言があったのは、大リーグが国際市場開発のため開催したメキシコシリーズの最中。日本ではゴールデンウイーク後半の2018年5月4日から3日間、メキシコ北東部にある同国第3の都市、モンテレイで行われたドジャース-パドレスの3連戦だ。初戦はドジャースが4投手による継投でノーヒットノーランを達成した。
同試合の合間などでインタビューに応じたマンフレッド・コミッショナーは、大リーグ成長のために不可欠としてエクスパンションに言及。大リーグが時期を見計らって32球団に拡張する意向を持っていることを認めた。
CBSスポーツによると、同コミッショナーは15年1月の就任直後からしばしばエクスパンションの可能性に触れており、同年の全米野球記者会(BBWAA)の昼食会では、メキシコ市とモントリオールを新球団の有力候補地に挙げていた。また、その翌年にはシャーロット(ノースカロライナ州)も候補地の一つにカウントしている。同サイトによると、産業界からはポートランド(オレゴン州)を推す声が上がっている。
大リーグは1960年まではアメリカン、ナショナル両リーグ計16球団だったが、61年以降6回エクスパンションが行われ現在30球団。最新のは1998年で、ア・リーグにデビルレイズ(現レイズ、東地区)、ナ・リーグにダイヤモンドバックス(西地区)が誕生した。この際、両リーグとも15球団ずつになるため、ブルワーズがア・リーグからナ・リーグに移り、ア14球団、ナ16球団の編成に。その後、ナ・リーグのアストロズがア・リーグに移って、両リーグ15球団ずつとなりシーズンを通じて交流試合が組まれている。
両リーグ1球団ずつのエクスパンションが実現すれば、それぞれ16球団の編成となり、交流試合がかつてのように期間限定で行われるようになる。
18年、ロンドンで初の公式戦か
大リーグでは、これまで一時は盛り上がりながら沙汰やみ状態になっていた国際市場の開拓気運がこのところ復活気配。米メディアの報道によれば2018年には、アスレチックスとマリナーズによる来季開幕戦を東京ドームで開催することや、6月にはロンドンでヤンキースとレッドソックスが公式戦を行うことが予定されているという。実現すれば、日本での開催は7年ぶり、欧州での開催は初めて。マリナーズがイチロー選手をリリースせずフロントに招いたのは、日本市場が視野に入れた上でのことともいわれる。
マリナーズなど米西海岸の都市に本拠を置く球団は、日本市場を重視しているといわれ、イチロー選手を含め、大リーグの日本人選手9人のうち、エンゼルス大谷翔平選手、ドジャース前田健太投手ら6人が西海岸のチームに所属。大谷選手の活躍に刺激され、選手スカウトの場としても注目がさらに増しているという。
マンフレッド・コミッショナーは、新たな市場開拓に前向きな一方、その前にとして、現有市場の改革着手の必要性を強調。レイズ、アスレチックス両球団にとって喫緊の課題となっている新球場についてまず解決の糸口を探りたいと述べている。