「金正恩ってかわいいよね」――韓国のSNS上で、こんな書き込みが増えているという。
中でも若い世代では、その好感度が急上昇中だ。ある大学で行われた調査では、肯定的なイメージを持つ人が約10倍に。国内では「金正恩のキャラクターグッズを作ることができないか」という話が大真面目に議論され、保守派からは「韓国人は集団忘却症にかかっている」と嘆く声も。
会談前「残酷で太った独裁者」→後「かわいい!豪放!ユーモラス!」
韓国メディア「アジア経済」は、ネット上でこんな書き込みが相次いでいることを紹介している。
「ウニかわいい」
「ハマる」
「ウニ」というのは、金正恩・朝鮮労働党委員長の「恩(ウン)」から取った呼び名だ。2018年4月27日の南北首脳会談後、国内では親しみをこめて、金正恩氏をこう呼ぶことが流行っているという。ついでに書いておくと、文在寅大統領は「イニ」だ。
こうした変化は、データの上からも見て取れる。韓国の有名私大・国民大学などは、19~21歳の学生を対象に、北朝鮮に関する意識調査を行った。5月8日の聯合ニュースの記事によると、会談前に金正恩氏に「肯定的」な印象を持っていた学生はわずか4.7%、そのイメージは、
「独裁者・核・残酷・肥満・暴力的・予測不可能」
といったネガティブなものばかりだった。ところが会談後の再調査では、肯定派が48.3%と、一気に過半数に迫る。イメージも、
「率直・豪放・若い・ユーモラス・かわいい・開明的・新しい」
と、180度変わってしまった。
文在寅グッズに続き金正恩グッズも!?
金正恩氏は「インスタ映え」の対象にもなっている。
ソウルでは4月30日まで、日本でも人気のスペイン人イラストレーター、ホアン・コルネラさんの展覧会が開かれていた。その展示品の中でも話題になったのが、かわいらしくデフォルメされた金正恩氏のイラストだ。シニカルな作風で知られるコルネラさんだけに、そのかわいさで裏の「残酷さ」を皮肉ったものと見られているが、若い世代の間では単純に「かわいい金正恩」として人気に。インスタで自撮りツーショットを投稿する人が続出する騒ぎとなった。
「グッズ化」の機運も高まっている。ヘラルド経済(ウェブ版)は1日、
「金正恩のキャラクターグッズは作れるか」
という記事を配信した。
韓国では現在、文在寅氏の高支持率を受け、「イニグッズ」なる商品が流行している。文氏の写真などをデザインしたノートやマグカップ、Tシャツなどが次々発売されているのだ。さらに会談の「成功」を受け、今度は金正恩氏にちなんだ「ウニグッズ」への関心が高まりつつあるという。
韓国は「集団忘却症」にかかったよう
韓国を笑ってばかりはいられない。日本のツイッターでも会談直後から、
「金正恩よくみたらかわいくない?」
「金正恩の笑顔かわいい」
「金正恩ちょっとかわいいやん」
といった書き込みは少なくないのだ。
だが、こうした「金正恩かわいい」旋風には、保守派を中心に警戒感も強い。韓国の大手紙・朝鮮日報(日本語ウェブ版)は10日配信のコラムで、ネット上での「かわいい」という声の高まり、さらには「統一後の大統領候補だ」といった声を紹介しつつ、
「首脳会談でのいくつかの発言や笑顔だけを見て、『独裁者金正恩』をいつしか忘れてしまったようだ。皆が『集団忘却症』にでもかかったようだ」
と手厳しく論評する。
コラムはこれまでのミサイル発射、身内への粛清といった行いを踏まえ、「相手を前にして、我々が内面から進んで武装解除してはならない」と結ばれている。