TBS系のドラマ「ブラックペアン」に登場する治験コーディネーター(CRC)について、実際の仕事とは違うとして、コーディネーター認定制度を運営する日本臨床薬理学会がTBSに抗議文を提出したと公式サイト上で明らかにした。
TBSは、番組の公式サイトで「ドラマの演出」だと説明している。ネット上では、こうした演出について、賛否が分かれる議論になっている。
「医師を接待したり、スーツで仕事したりしない」
このドラマは、海堂尊(たける)さんの長編小説(2007年)が原作になる。嵐の二宮和也さん(34)扮する大学病院の天才外科医が、加藤綾子さん(33)が演じる治験コーディネーターの協力を得て、医療界の不正を暴いていくというストーリーだ。治験コーディネーターとは、新薬を開発するための臨床試験に当たって医師の指示で患者をサポートする仕事を指す。
2018年4月22日からスタートし、これまでに3回放送している。
ところが、医師を接待したりする仕事ぶりについて、初回放送後から治験関係者らの間で、本来のコーディネーターとは違い、患者らの誤解を生むとする危惧の声がツイッター上などで相次いだ。普段は院内で白衣を着て仕事をしており、スーツ姿のコーディネーターを見たことがない、といった指摘も出た。
原作には、治験コーディネーターは登場しないのに、なぜTBSはわざわざこの役を作ったのかとの疑問も上がった。
こうした声を受けて、日本臨床薬理学会は5月2日、本来の業務とはかけ離れており、コーディネーターを侮辱するものだとして、TBSに抗議する考えをフェイスブック上で表明した。
そして、7日になって、TBSの社長と番組に同様な内容の見解書を送ったことを学会のホームページ上で明らかにした。
「仕事と違い失笑するレベル」「フィクションに過ぎない」
見解書では、製薬会社と契約したり医師を接待したりする治験コーディネーターはいない、患者の負担軽減費が300万円は高すぎで、実際は患者を誘導しないよう1回7000~8000円ほどだ、スーツを着ては仕事ができない、などとドラマの問題点を挙げた。そのうえで、フィクションとはいえ、患者に不信感を与える内容であり、臨床試験に今後協力してもらえなくなってしまうと訴えている。
そのうえで、TBSに対して、コーディネーターの使命などについて「正しくご認識の上、あまりにも現実と乖離した描写を避けて頂くよう希望する」と要請している。
TBSの広報部は5月10日、「日本臨床薬理学会からは見解書をいただきました。現在検討しております」とJ-CASTニュースの取材にコメントした。
なお、番組の公式サイトでは、ドラマの演出上、本来の業務とは異なるものも含まれていると説明し、治験については、「実際には定められた基準の中で、患者や病院側に支払われます」と注意書きを付けている。
ツイッター上などでは、ドラマの演出について、様々な意見が出ている。
演出に疑問を呈する向きとしては、「現実と似てる部分が無くて失笑するレベル」「テレビでの影響力を考えると悪い印象を持たれてしまう」「プロに対するリスペクトの精神が無い」といった声が上がった。一方で、「フィクションはフィクション」「制作側に侮辱する意図はないと思う」「ドラマごときに物言いって... もう何も作れなくなるな」などと演出に理解を示す声もあった。