FMラジオ局「NACK5」(さいたま市)で、プロ野球・埼玉西武ライオンズ戦を中継する「サンデーライオンズ」が、一部の聴取者から不評を買っている。
BPOには「試合展開そっちのけの放送になっている」との批判も寄せられているが、一体何があったのか。
「新時代の野球放送」
「サンデーライオンズ」は、1989年放送開始の長寿番組だ。
西武ライオンズをひいきとする番組で、チームの内情を伝えたり、選手へ直撃レポートをしたりするなど、球団ファンを中心に支持を集める。
だが、今シーズンから大幅に変更された「中継スタイル」が非難を浴びている。
従来、実況アナウンサーとレポーターを中心に中継していたが、18季からはお笑いコンビ「上木恋愛研究所」のキューティー上木さん(39)とレポーターの体制になった。
それにともない中継内容も刷新。番組公式サイトに「誰も体験したことのない新時代の野球放送をお届けします!」とあるように、エンターテイメント性を追求している。
具体的には、聴取者から野球に関する大喜利の回答を募る「野球大喜利」を核に番組を進行。4月29日のお題は、
「セカンドベースの真ん中にボタン発見!押すと何が起こる?」
5月6日は、
「新ルール追加。ネクストバッターズサークルで必ずしないといけなくなったこととは?」
だった。
「ラジオ局がリスナーを捨てたら、もう後はない」
しかし、実況アナウンサーの降板とエンタメの追及には弊害もあったようだ。
毎日新聞(ウェブ版)が4月14日に公開した記事「『野球愛』空回り リスナー置き去り『サンデーライオンズ』」では、実況の部分が中継でほとんどなくSNSで批判が相次いでいると紹介。局側と聴取者とのすれ違いが続いているとし、
「ラジオ局がリスナーを捨てたら、もう後はない」
と厳しく指摘している。
放送倫理・番組向上機構(BPO)が公式サイトで公開している「視聴者からの意見」の18年4月欄でも、
「試合の中継をおろそかにし、『野球大喜利』をするなど、試合展開そっちのけの放送になっている。テレビの副音声ならまだしも、ラジオ局は、運転中のドライバーなど、テレビの見られない環境の人たちにも伝わる放送をしてほしいと思う」
などと辛らつな声が寄せられている。
厳しい事業環境で変化余儀なく
番組担当者は2018年5月10日、J-CASTの取材に
「正直試行錯誤している段階です」
と苦悩をにじませる。
中継スタイルの変化には、野球中継をめぐる厳しい外部環境があった。TBSラジオのプロ野球中継撤退や、動画配信サービス「パ・リーグTV」「DAZN(ダゾーン)」の新規参入もあり、「私たちも新たなモノを取り入れていかないといけないと判断しました」。
そこで新しいラジオ需要の開拓を狙い、メインパーソナリティーにお笑いタレントを起用。「エンタメ性」を取り入れることで、これまで野球中継に興味の無かった層の獲得を目指した。
だが、先の批判などもあり、「正直試行錯誤している段階です。バラエティー(要素)と野球内容のバランスをどう取るか...。最近では、試合展開もしっかり追うようにしています」(担当者)。