つい数日まで米国に対するけん制を続けてきた北朝鮮が一転、2018年6月にも行われる米朝首脳会談について国営メディアで言及し「歴史的な対面になるだろう」と高い期待感を示した。米国のポンペオ国務長官は5月9日に平壌を訪問し、朝鮮労働党の金正恩委員長と会談。トランプ大統領のメッセージを伝えられて「高く評価し、謝意を表した」という。
北朝鮮は拘束していた韓国系米国人3人を解放。ポンペオ氏と正恩氏は「討議された問題について満足な合意を見た」といい、米朝首脳会談に向けた調整は最終段階に入っている模様だ。
「討議された問題について満足な合意」
朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は5月10日のトップ項目でポンペオ氏との会談を伝えた。それによると、トランプ大統領からのメッセージを口頭で伝えられた正恩氏は
「大統領が対話を通じた問題の解決に深い関心を持っていることについて高く評価し、謝意を表した」
といい、「全世界の焦眉の関心事となっている先鋭な半島地域の情勢に対する評価と見解」について意見交換。米朝首脳会談についても「関連する両国最高指導部の立場と意見を交換」し、正恩氏は
「朝鮮半島の肯定的な情勢発展を促し、立派な未来を建設するための立派な第一歩を踏み出す歴史的な対面になるだろう」
と期待感を示したという。
さらに、労働新聞の記事では、両者が「討議された問題について満足な合意を見た」とも伝えている。
米政府内の見方を「冷戦式思考に染まった連中ならではの詭弁」と非難
朝鮮中央通信はここ数日、米国をけん制する記事を配信し続けてきた。5月6日には、外務省スポークスマンが、南北首脳会談で朝鮮半島の非核化を目指す「板門店宣言」が出たことについて、米国が
「いわゆる制裁・圧迫の結果にであるかのように世論をまどわしている」
と非難し、
「相手を意図的に刺激する行為はようやくもたらされた対話の雰囲気に水を差して情勢を原点に逆戻りさせようとする危険な企図にしか見られない」
などと警告。5月9日配信の記事でも、北朝鮮側の行動について「最大圧迫の結果」「限界に至った選択」といった声が米政府内で出ているとして、
「冷戦式思考に染まった連中ならではの詭弁(きべん)である。このような言動はややもすれば朝鮮半島の情勢を以前の状況に逆戻りさせる危険性がある」
などと非難したばかりだった。