中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長による2度目の首脳会談は、2018年5月8日(日本時間)、両国の国営メディアが報じて公式に明らかにされた。ただ、両者の伝え方は大きく違っていた。
中国の国営中央テレビは、会談や夕食会、屋外で少人数で散策する様子などを約7分間にわたって流したのに対して、北朝鮮の朝鮮中央テレビでは会談の映像は流れず、アナウンサーが声明をひたすら読み上げた。声明を読み上げたのは、北朝鮮にとっての最重要ニュースを担当する李春姫(リ・チュンヒ)アナウンサー。いつもはかけていないメガネ姿で登場し、原稿を読む際は、ほぼ下を向いたままだった。ベテランアナウンサーに何があったのか。
原稿を両手で持ち、終始顔を下に向けて読み上げる
李アナウンサーは金正日総書記の死去やミサイル発射、核実験など、北朝鮮にとってのあらゆる重要なニュースを担当してきた。今回の訪中のニュースでは、李アナウンサーはピンク色のチマチョゴリ姿で登場。北朝鮮にとって「慶事」を伝えるときの衣装だ。声明を読み上げる17分の間、画面にはずっと李アナウンサーの姿が映し出された。
ただ、今回の李アナウンサーは、大きく2つの点で様子が違った。ひとつが、普段はかけていないメガネ姿だったこと、もうひとつが原稿の読み方だ。普段の李アナウンサーは、紙を机の上に置いて原稿を読む。時折目線を下に落とすが、顔は前を向いたままだ。ところが今回の放送では、終始10枚以上はある紙を両手で持ち、目線だけではなく顔も下を向けて原稿を読み続けた。
韓国メディアによると、朝鮮中央テレビのスタジオには12年からプロンプターが導入されている。プロンプターは、原稿をカメラの前のモニターに表示する装置で、原稿を読みながら「カメラ目線」を続けることができるようになる。仮にプロンプターが使えていれば、顔を下に向け続ける必要はなかったはずだ。
映像編集やプロンプターの準備が間に合わなかった??
NHKによると、正恩氏を乗せたとみられる北朝鮮の特別機が大連の空港を飛び立ったのは、日本時間で5月8日の16時20分頃。中朝両国のメディアが正恩氏の訪中を報じたのはそれから3時間40分後の20時だった。北朝鮮メディアがこれほどの短時間で正恩氏の動静を報じるのは異例で、映像の編集やプロンプターの準備が間に合わなかった可能性もありそうだ。
なお、中朝首脳会談の写真は、5月9日朝になって労働新聞や朝鮮中央通信で初めて報じられた。