パソコンに向かう外国人の少年がいきなりブチギレ、奇声を上げながら手元の机を激しく叩き、ついにはキーボードを破壊してしまう――一昔前の「ニコニコ動画」をよく見ていたような人なら、この動画を一度は見たことがあるだろう。
彼のことを、「キーボードクラッシャー」と人は呼ぶ。かつてネットを通じ、世界中で話題を呼んだ少年だ。それから12年、その本人と思われる人物が再びYouTubeに動画を投稿、しかも昔の自分と「共演」したことが話題を呼んでいる。
「ドイツ発の最大のネットミーム」
動画を投稿したのは、「ヘラクレス・ビーツ」を名乗るドイツの男性である。
さわやかな短髪にメガネが印象的な彼は、別の動画では「ヘラクレス」の名前どおり、隆々たる筋肉も披露している。現在、ラッパーとして活動中だ。
このマッチョイケメンが、実はあの「キーボードクラッシャー」の現在の姿だという。......言われてみれば、目元などに面影がある。
2006年、当時14歳の少年が投稿した件の動画は、「アンリアル・トーナメント」というPC向けゲームを遊ぶ様子を自撮りしたものだ。いかにもオタク、という雰囲気の彼、やる気満々でテーブルに着いたものの、ゲームがなかなか起動せず、しょっぱなから画面に罵声を浴びせまくる。立ち上がってからはテンションがさらに高まり、叫び散らしながら敵を倒していくものの、やられてしまうや、キーボードを両手でつかみあげると、「ウワー! アー! アアアアー!!」と悲鳴を上げながらテーブルに叩きつける――。
4分強の動画は、2005年に誕生したばかりのYouTubeを通じて世界的に拡散した。英語圏では「アングリー・ジャーマン・キッド」「UT(アンリアル・トーナメント)キッド」といった名前で知られ、ドイツのウェブメディア「GamePro」は、
「ドイツ発の最大かつ最も有名なインターネットミーム(=ネット上のネタ)」
と評する。
日本でも「ニコニコ動画」などで「キーボードクラッシャー」と呼ばれ、そのドイツ語の罵倒に日本語の「空耳」を当てた動画や、音声などを加工したパロディー(MAD)動画が作られるなど、一躍人気者になった。
12年前のセリフ真似する場面も
投稿者は、あくまでこれは「演技」だと説明していたものの、一部では「本物のゲーム中毒者」などとして紹介されることもあった。2014年には日本の「情報7days ニュースキャスター」(TBS系)が「インターネット依存症」の事例として取り上げ、失笑を買ったこともある。
その後は消息不明だったが2017年10月、上記の「ヘラクレス・ビーツ」さんが、自らが「キーボードクラッシャー」だとする動画を初めて投稿、話題になった。そして18年3月23日、最も有名な「キーボードクラッシャー」動画を、現在のヘラクレスさんが見る、という企画を配信した。
ヘラクレスさんは、14歳の自らの姿に終始苦笑い。特に序盤は少し恥ずかしそうで、鼻の頭をポリポリかくような場面も。しかしだんだんとノってきたのか、画面の中の自分に合わせて「口真似」したり、絶叫にこらえきれず吹き出したりする姿も見られた。
この動画は、ドイツを中心とするネットメディアで相次いで取り上げられ、YouTubeでの再生数は5月9日現在30万回を超えている。日本では5月7日にツイッターであるユーザーがこの動画を紹介、6万回近くリツイートされ、改めてその存在が知れ渡った。
ツイッターでは、「こんなおっきくなって...」「イケメンになっててわろた」「めっちゃ好青年に育ってて草」など、その成長ぶりに目を細める人々のほか、「キーボードクラッシャーがもう12年も前な事に頭を抱えてる」「12年経ってることにも絶望を覚えるわ」など、時の流れの速さに落ち込む声も少なくない。