「現実的」との評価も
産経は「『時期削除』の説明足りぬ」(4月29日)で、「いたずらに目標時期にとらわれて場当たり的に政策を変更するのは望ましくない」と、理解を示しつつ、「唐突に時期の明示をやめた波紋は小さくない。......(2%を実現する)道筋をどう描いているのかを、もっと丁寧に説明すべきである」とくぎを刺し、具体的に2019年度2%達成に黒田総裁が自信を示していることを槍玉に挙げ、「問題はこうした認識の説得力である」と疑問を呈する。さらに、「金融機関の収益悪化や市場のゆがみといった副作用が強く意識されている。そこに目配りし、いかに効果的な政策を講じるかが大事だ。......その意図を国民に分かりやすく示す」必要を指摘している。
日経、産経は、「2%を達成するために、金融緩和を強化する必要はない局面だ」(日経)というように、基本的に現行政策の継続を肯定したうえで、副作用にも目配りした丁寧な説明を求める論旨で、ほぼ一致している。
現行政策肯定で同じ立場の読売は、日銀の今回の決定への支持を鮮明にしている点で際立つ。タイトルからして「達成時期の削除は現実的だ」(4月30日)と謳い、まず「金融政策の自由度を高める狙いがあるのだろう。現実的な判断と言える。......時期の削除には、守れない約束を重ねて日銀の信任が損なわれる事態を避ける意図も窺われる」と、最大限の理解を示す。さすがに緩和策の拡大には「これ以上強化すれば弊害が広がりかねない」とする一方、「短兵急な金融引き締めへの転換は厳に避けるべきだ」と、政策の現状維持を強く求めている。
このように、現行政策へのスタンスの違いはあっても、金融政策に限界があるという認識は常識だ。「日銀の緩和拡大に限りがあるだけに、持続的な経済成長には政府の役割が一層重要となる。......政策で消費拡大が生産を押し上げる好循環を作りたい」(産経)、「将来不安があるから国民は消費を控え、不確実性が高いから企業は賃上げや投資に踏み切れない面がある。目指すべきは、実体経済の好転に伴う『良い物価上昇』である」(東京)などの指摘は当然だろう。