「目標達成まで時間がかかっていることの説明責任」に言及
この問題は、多くの大手紙が社説(産経は「主張」)で取り上げた。
まず厳しいのが朝日だ。「地に足ついた見通しを」(5月2日)は「政策目標と客観的見通しをはっきり区別すること自体は、遅きに失したとはいえ望ましい方向だ」としつつ、「たんに記述を削除するだけでは、『目標未達』の批判を避けるための責任逃れと言わざるをえない」と断じる。日銀の見通しの信頼性を疑問視したうえで、「目標達成まで時間がかかっていることの説明責任も、引き続き問われる」として、「何が物価上昇を妨げているのか。それは現行の金融政策で乗り越えられるものなのか。国債の大量購入やマイナス金利、株式投資信託の買い入れという異例の政策を続けている以上、より深い分析と十分な説明が必要不可欠だ」と厳しく指摘。現行政策が行き詰まっているという基本認識からの批判といえるだろう。
東京も「実体経済の好転が先だ」(5月4日)で、今回の決定を「異次元緩和の失敗をようやく認めたことを意味する」と切り捨てる。その心は「日銀が2%の達成時期を示し、それをコミットメント(約束)することで人々の物価上昇予想が高まると説明してきた。前提となる達成時期を示さなくなるのだから事実上、異次元緩和が失敗したことを認めたことになる」という論理で、朝日と同様、現行政策への疑念が根底にある。
5月5日まで、今回の決定について社説を掲載していない毎日も、黒田総裁再任の際の「独立性の信念が試される」(4月12日)で、日銀の独立性との絡みで、「確かにデフレを止めることも『物価の安定』上、重要だろう。だが、......2%の物価目標にがんじがらめとなり、バブルや財政破綻で国民経済を大混乱に導いては元も子もない」と、現行政策に懐疑的な立場から、くぎを刺している。
日経は「市場との対話の技術を磨け」(4月29日)で、今回の日銀の決定を「日銀と市場の2%目標をめぐる認識の溝を埋め、市場との対話を円滑にしようとする試みだ」と位置付けたうえで、「展望リポートの見通しを達成時期の目標ではないことを明確にしたのは一歩前進だが、物価目標の性格についてはまだわかりにくい面もある。日銀はさらに市場との対話を丁寧に進める必要がある」指摘。「日銀は今後も金融緩和策の副作用も含めて政策の検証を柔軟に進め、必要な修正をためらうべきではない」と書き、明示はしないものの、異次元緩和からの「出口」への備えも求める。