通勤や通学などで多くの人が立ち寄る「駅」にさまざまな機能を持たせる動きが広がっている。大規模な商業施設を抱える駅ビル開発はこれまでも盛んに行われてきたが、「人手不足」「働き方改革」など時代の流れに応じた新たな試みが続々と始まっている。
宅配大手のヤマトホールディングスは2018年1月、ファッション通販で注文した商品を駅ビルで受け取り、その場で試着できるサービスを始めた。利用者は配送先として駅ビルを指定し、会社帰りなどに、ヤマトが駅ビルの売り場に設けた試着室を利用し、気に入らなければ、その場で返品することも可能だ。
宅配業界とドライバー確保問題
宅配業界では深刻な人手不足からドライバーを確保するのが困難な状況にある。さらに、ファッション通販は返品率が高く、ドライバーの負担が大きいとされている。衣類などの場合、実際に手にしたり、見たりすると色やサイズが気に入らないケースが多いためだ。駅ビルを配送拠点の一つと位置づければ、ドライバーは個々の利用者の自宅に再配達や返品で何度も足を運ぶことがなくなる。ヤマトはドライバーの数も配送用トラックの数も減らすことにつなげたいと期待している。
富士ゼロックスと東京メトロは6月から、東京都内の駅構内に個人用のオフィス空間を作り、企業やビジネスマンに貸し出すサービスを始める。南北線の溜池山王駅と千代田線の北千住駅に期間限定で設置し、その後、状況を見ながら、他の駅にも拡大していく計画だ。オフィス内にはテーブルや電源コンセントを準備し、「Wi‐Fi」や液晶モニターも使えるようにする。