任天堂トップが一気に20歳あまり若返る。2018年4月26日、君島達己社長(68)が相談役に退き、後任社長に古川俊太郎取締役(46)が就くトップ人事を発表した。
42歳で社長に抜擢された故・岩田聡前社長にはわずかに及ばないが、東証1部上場企業としては異例の若さだ。めまぐるしく変化するゲーム業界を、若い力で引っ張る。
君島社長は急きょリリーフだった
古川氏は東京都出身で早稲田大政治経済学部卒業後、1994年に入社。主に経理畑を歩み、現在は経営企画室長、ポケモン社外取締役などを務める。古川氏は記者会見で「非常に驚いたが、会社が集団指導体制に変わることは承知していた。そのタイミングが来た」と就任を要請された時の思いを語った。
現社長の君島氏は三和銀行(現三菱UFJ銀行)出身。任天堂海外子会社役員や本体の常務取締役などを経て、2015年9月に社長に就任した。「天才プログラマー」と言われた岩田氏が社長在任中に急逝し、急きょリリーフしたのが君島氏だった。就任時の年齢は65歳で、「世代交代を確実に進めるのが使命」(君島氏)と、就任時から考えていたという。
君島氏が社長を任された2016年3月期の業績は良くなかった。最終損益は165億円の黒字を確保したものの、前期からは6割の大幅な減益。2017年3月期には連結売上高が5000億円を割り込んだ。
そんな不振を吹き飛ばしたのが、2017年春に発売したゲーム機「ニンテンドースイッチ」だ。携帯できる据え置き型ゲーム機というコンセプトが受け入れられ、人気が拡大。一時は品薄状態に陥った。
ハードウエアが1505万台売れる
2018年3月期はスイッチのハードウエアが1505万台、ソフトウエアは6351万本売れた。中でも「スーパーマリオ オデッセイ」が1041万本の大ヒットを記録、「マリオカート8 デラックス」は922万本、「Splatoon 2」は602万本を売った。同期の連結売上高は前期比2.1倍の1兆556億円、営業利益は6倍の1775億円と「完全復活」を遂げた。
君島氏は記者会見で「決算が想定よりも良かったので、交代を前倒ししてもいいと思った」と打ち明けた。「スイッチ」のヒットが、経営トップ交代の「スイッチ」につながったというわけだ。
古川氏を支えるのが、2002年から代表取締役を務め、長年ソフト開発の責任者を務めてきた宮本茂氏や、企画制作やビジネス開発を担当する高橋伸也氏、ハード開発部門の塩田興氏らだ。岩田氏のようなカリスマに頼るのではなく、個々の役割をきちんと分担して経営にあたる「集団指導体制」になる。
ゲーム業界は浮き沈みの激しい世界だ。スイッチによる好況がいつまで続くか、分からない。ソフトウエアもどの程度ヒットするか、読めない。専用機より規模が大きいスマートフォン向けの対応力も問われる。46歳の肩に課せられた課題は重い。