北京国際モーターショー(2018年4月25日~5月4日)が開催中の展示会場周辺の交通渋滞は、例年よりもひどくなり、地下鉄で帰る場合でも入場者を制限するため、駅に入るのは相当苦労した。北京では車を購入する前に、抽選でナンバーパレードを取得するが、2018年にその比率もついに10万分の1という狭き門になった。中国では車ブームが少しも冷めていない。
中国では、2017年に2800万台の車が売れ、日系メーカーは近年あわせて13%のシェアを取るようになり、販売量も増加している。しかし、スズキ自動車だけは例外のようで、中国市場から撤退するという噂が何度も出回っている。今年の北京モーターショーでは、スズキ自動車関連の記者会見は、ほとんど「撤退することはない」という言葉からスタートしている。
「中国市場から撤退はない」
中国で4月27日、「孫少軍」という名前でのつぶやきがSNSで拡散された。
「最近、某合弁ブランドが正式に中国市場からの撤退を発表したが、同社の販売網が、中国ブランドの高級ブランド販売拠点にグレードアップされていく」
「某合弁ブランド」とは、ここ数年経営不振の日系自動車メーカーの長安スズキだと中国の読者なら、すぐ分かる。
しかし、北京モーターショーに行けば、長安スズキも出展し、同社商品であるビターラ、S-クロス、アルビオ・プロなどが展示されており、今回の展示会で同社が強調していたのは、「優れた小型車」路線だった。
そして、5月2日、長安スズキ広報部は『北京商報』の取材に答えて、中国からの撤退は「事実ではない」と答えている。
中国の自動車市場が拡大していく中、ほとんどの日系メーカーは販売量を増加させてきた。2015年に日産車が中国で125万台、トヨタ車は100万台売れたが、2018年には、販売目標を、それぞれ160万台と140万台に引き上げている。
一方で、スズキが中国から撤退するという類の噂は2015年から絶えず流れていた。2018年4月29日に『北京商報』に次のような記事が載った。
「中国市場におけるスズキのシェアは下がる一方であり、S-クロスなど複数の新車の販売量もあまり期待できず、長安スズキはすでに多くのモデルの導入計画を白紙に戻し、商品と戦略も同様に停滞状態に陥っているため、中国市場から撤退するだろう」
スズキの販売量の減少は事実である。全国の乗用車市場情報連席会のデータによると、2017年の長安スズキの販売量は86513台で、前年比で26%も低下している。事実上、2010年から17年まで、スズキの中国での売り上げは悪化する一方で、中国市場のすべての日系自動車メーカーの中でスズキの業績が最も悪かった。
米国での轍を踏むのか
かつてのスズキは違った。スズキは早くも1984年に中国へ進出し、90年代には小型車のアルトで大成功を収めた。当時の中国人の所得水準では、ボディがより大きなセダンを所有できる人は中国ではほとんどおらず、例えばトヨタのカローラなどのモデルの自動車は高級車、もしくはぜいたく品と見なされていた。
しかし、この十数年で中国の一般家庭の所得水準は急速に上がり、自動車を購入する際に、人々が主に検討するのは外観が大きくて立派かどうか、レイアウトが豊富かどうか、馬力が大きいかどうかといった点に移った。それにもかかわらず、スズキはこの長い間ずっと、「周りが変わろうとも己は変わらず」という姿勢を保ったため、中国にボディの大きなモデルを投入することはなかった。
スズキの小型車は、日本やインド、さらには全世界で売り上げが好調だが、その一方で中国や北米の市場では苦戦している。なぜなら、これら二つの地域ではボディの大きなモデルが人気だからだ。
もちろん、「スズキが自社製品のモデルを堅持することは戦略的に正しく、自らが熟知している分野で商品の質を極めて、外界の様々な変化に振り回されないという精神は称賛に値する」とスズキを擁護する人は少なくない。しかし、グローバル化の時代にあって、様々な市場に狙いを定めて様々な対策を考え、様々な商品を開発し、固定観念にとらわれないという理念こそ、より現実に即しており、より将来性のある企業理念だと思われる。
スズキはすでに2012年、米国での自動車販売からすでに撤退している(現在販売しているのはオートバイだけ)。スズキは中国でアメリカでの轍を踏まないのか。中国では注目が集まっている。
(在北京ジャーナリスト 陳言)