英サセックス大学が2018年4月23日、ウェブサイトで発表した研究成果のタイトルは「サッカーはファンを幸せにしない」だった。
研究では、「敗北後にサッカーファンが感じる痛みは、勝利の喜びの2倍以上」、つまりサッカー観戦を続けることによる影響は、長い目でみれば「はるかにネガティブ」なのだという驚きの結果を示している。
3年間で3万2000人から合計300万の回答を収集・分析
研究チームは、質問への回答でユーザーの「幸福度」を数値化するスマートフォンアプリ「Mappiness(マッピネス)」を使い、3年間で3万2000人から合計300万の回答を収集し分析。アプリは、ユーザーがどう感じているか、何をしているか、などを定期的に尋ねた。回答と試合結果を組み合わせることで、ファンの試合中・試合後の心情を把握した。
すると、サッカーファンでいることの影響は、長い目でみれば「はるかにネガティブ」であると示されたという。平均して、ファンの幸福度は「勝利」から1時間後に3.9ポイント増したが、2時間後には1.3ポイント、3時間後には1.1ポイントにまで落ちた。一方で「敗北」の場合、幸福度は1時間後に7.8ポイント低下し、2時間後は3.1ポイント、3時間後にも3.2ポイント低下をしていた。なお、「自宅」よりも「現地」で観戦していたほうが幸福度の上下動が大きくなる。
同大の行動経済学者で、今回使ったアプリの開発者でもあるジョージ・マッケロン博士は「ほとんどのファンはサッカーが人々を幸せにすると言うが、このデータは異なる。サッカーの試合は平均して、人の幸福にとって圧倒的に負の影響があると示している。喜びより痛みが増すにもかかわらずチームの応援を続けることは、経済学的にみれば非合理的だ」との分析を発表文で示している。
「どのスポーツでも同じ話」?
では、なぜ現にサッカーを見続けるのかといえば、同研究ではまず「単に生観戦することでの興奮を期待しているから」だと指摘。キックオフ前の現地観戦ファンの幸福度は、7.9ポイントも急上昇していたという。また、「ファンはチームが勝てることを過剰に期待するうえ、敗北を経験してもその期待を修正したり学習したりすることがない」と考察している。
研究チームのピーター・ドルトン教授は発表文で、「サッカーファンは概して幸せにならないにもかかわらず、チームが実際に勝利したときに湧き上がる歓喜のため、敗北も我慢しているようだ。1度の勝利で、敗北の痛みはぬぐいきれないのだが」とコメント。サッカーによって生まれる感情は「経済学者として実に興味深い」としている。
この研究は日本のインターネット掲示板でも注目され、「強いチームが人気があるのはそういうことだね」「これはちょっとわかるな チームが弱いと見ると腹が立ってイラつく」などと同意する声もある。だが一方で、
「こんなもん熱心に応援してるチームがあったらどのスポーツでも同じ話だろ」
「負けたら勝った時の倍悔しいなんてのは、普段勝っている常勝チームの発想。勝てない、3-0でもセーフティリードではないチームを応援していれば、負けてもいい試合だったね、もう少しだったのにね、って感じだ」
とあまり真に受けていない声も見られた。