焦点になるのは自動車と牛肉
個別分野で焦点になるのは自動車と牛肉だろう。
トランプ大統領は首脳会談後の会見で、「日本は何百万台もの車を輸出してくるが、米国は(日本の)貿易障壁などのせいでそれほど多く輸出できていない」と、対日貿易赤字の8割を占める自動車関連分野を標的にする姿勢を鮮明にした。日本側からすれば、2017年の日本の対米輸出は173万台とピークから半減し、米国現地生産は376万台と輸出の2倍以上になっている一方、日本への輸出では、安全や環境に関する規制でも国によって、また内外でも差別はなく、日本で米国車が売れない(2017年で約1万3000台だけ)のはメーカーの努力不足でしかないという立場。
だが、3月に妥結した米韓FTA再交渉で、米国が鉄鋼などの輸入制限で韓国を対象から外す一方、韓国側は米国仕様の輸入車の受け入れ拡大などを飲まされたという例もある。日本が輸入を増やせないなら、輸出を減らせと迫ってくる可能性もあり、対応に苦慮することになりそうだ。
牛肉は、かつて日本の輸入量の半分が米国産だったが、2003年に米国での牛海綿状脳症(BSE)発生で豪州産がシェアを高め、17年は米国40%に対し豪州50%と逆転している。15年には日豪経済連携協定(EPA)が発効し、豪州産の関税が最終的に9%に下がる一方、TPPから離脱した米国産の関税は38.5%のまま。安倍首相は首脳会談でも、「日本農業にとってTPPが限界だ」と訴えたが、米側からは厳しい要求が突きつけられそうだ。
トランプ大統領は11月の中間選挙に向け国内農業票、自動車など製造業の衰退した地域の労働者票の獲得が至上命題。一方、安倍首相も秋の自民党総裁選(地方票)、2019年の統一地方選と参院選を控え、特に農業での譲歩はできないところだ。
毎度のゴルフを含め個人的な親密さ、北朝鮮問題をはじめとする安全保障問題での協力関係はあっても、経済問題では激しい言葉も交え、対立をためらわないのがトランプ流。在韓米軍撤退さえチラつかせて韓国の譲歩を引き出した米韓FTA見直し交渉を目の当たりにして、安倍政権はどのような「取引(ディール)」を迫られるかと、身構えている。