バヒド・ハリルホジッチ前サッカー日本代表監督の解任をめぐり、同氏と、解任を決断した日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長の言い分に食い違いがあることを、元Jリーガーのスポーツジャーナリスト・中西哲生氏(48)が新聞寄稿で鋭く指摘し、話題を集めている。
中西氏は自身のラジオ番組で、その反響の大きさへの驚きとともに、「何かあればしっかり意見を言うべきだと思っていた」との考えを明かした。
「認識の違いを(協会側は)ちゃんと説明してもらわないと」
中西氏は2018年5月2日放送の「中西哲生のクロノス」(TOKYO FM)で、4月27日のハリルホジッチ氏の会見について、自身の1日付朝日新聞デジタルへの寄稿と絡めて触れた。寄稿ではハリルホジッチ氏と田嶋会長の言い分のズレを指摘しており、インターネット上で話題に。本人も反響の大きさに「ちょっと驚いた」といい、寄稿の内容を2点、番組で簡単に振り返った。
「一番驚きだったのは、田嶋幸三会長が最初の(4月9日の)会見で『技術委員会がたくさんの修復をしようと試みた』と話をしましたが、ハリルホジッチ監督は(同27日の会見で)『技術委員会の存在すら知らなかった』ということなんですよね。もしこれが本当なら驚くべきことです」
「もう一つの驚きは、『技術委員長だった西野(朗)さんが、参加したすべてのトレーニングなどでいつも良かったと言ってくれていた』とハリルホジッチ監督が話していたことです。本当だったら『修正』する必要がないので、その齟齬、認識の違いを(協会側は)ちゃんと説明してもらわないと、公益財団法人である以上、税制優遇も受けていますし、大きな組織なので説明責任はあるのではないか」
そのうえで「ロシア・ワールドカップ後の人事も含めて協会には取り組んでいてほしいことですし、今後に対して不安が残った――と書きました」と述べている。
ネット上での反響は、多くが「心配」の声だったという。苦笑いしながら「ここまで書いて大丈夫なのかという風に言われましたが」として、自身の本意を述べている。
「僕は8年間、サッカー協会の理事会に特任理事として出させていただいていました。2年前にその特任理事というポストがなくなって退くことになったんですが、8年間外部理事として、何かあればしっかり意見を言うべきだと思っていたので、こういった趣旨の発言は理事会でも言わせてもらっていました」
中西氏は「今後も日本サッカーの進化のために自分がやるべきことをやっていきたいと思っています」として、「とにかくW杯に向け、こうなった以上どうやって良い大会にすべきか。終わった後どう良い体制にすべきかを考える日本サッカーであってほしいと思います」と決意を述べていた。
「勇気ある行動、リスペクトします」
解任については食い違いがいくつも浮き彫りになっている。田嶋会長は、解任理由を「選手と監督のコミュニケーションや信頼関係が薄れた」としていた。だがハリルホジッチ氏は、選手らとこまめに連絡を取りあい、食事も共にするなどしていたことから「何のコミュニケーションの問題もなかったと思っている」と真っ向から反論。突然の解任について「私が考えつく限りの最悪の悪夢」「通告には大変失望した。私へのリスペクトがなかった」と不可解さを露わにしていた。
中西氏の朝日への寄稿が反響を集めた大きな理由は、こうした協会に対する疑問をはっきりと投げかけたことにあったようだ。ハリルホジッチ氏が解任され、同氏が会見で困惑した思いを明かしてからも、テレビで活躍するサッカー専門家が「協会の説明責任」を指摘した例は少なかった。インターネット掲示板では寄稿に対して、
「中西よく言った」
「すごい正論」
「協会に説明義務があるのは明らかだけど田嶋が完全に逃げてるからな」
「協会との関係悪化を懸念し、口を噤む元Jリーガーが多い中で勇気ある行動、リスペクトします」
といった声が続々とあがっていた。サッカージャーナリストの河治良幸氏も1日、ツイッターで
「さすがは中西さん。地上波でも活躍されている人が、今回の解任決定の矛盾点に真摯に向き合って語ってくれているのは大きい」
と投稿していた。