「メラニアがなぜ、ここにいるんだ」
トランプ氏はブッシュ家と同じ共和党なのだから、葬儀に出ていたら少しは溝が狭まったのではないか、との声もある。
写真のコメントには、「メラニアがなぜ、ここにいるんだ」、「メラニアが端にいてよかった。クリップできるから」などという意地の悪いものもある。が、写真に写っている人のほとんどが、夫であるトランプ氏の「敵」のような存在なのに、メラニア夫人は温かく受け入れられている、と感じたアメリカ人は少なくない。
葬儀中にメラニア夫人がオバマ氏と笑顔で言葉を交わす様子も、話題になった。
「浮気騒動の渦中にいるトランプに、メラニアはうんざりしているに違いない」、「これまであんな笑顔を見せたことはない。オバマといる方が幸せそうだ」といった声も聞こえてきたが、見ていて思わず微笑みたくなる瞬間だった。
メラニア夫人は、ホワイトハウスのスタッフ2人を伴って、葬儀に参列した。スタッフは2人とも、バーバラ夫人を敬愛し、ブッシュ家と親しくしてきた。関係者によれば、バーバラ夫人に最後のお別れができるように、との配慮だという。
さまざま声はあるものの、 バーバラ夫人の葬儀に、政党を超えた「希望」を見出せる瞬間があったことが、何よりの弔いになったのではないだろうか。
(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。