女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ(東京)が経営破綻した問題に絡み、金融庁は物件オーナーの大半に融資していたスルガ銀行(静岡県沼津市)への立ち入り検査に踏み切った。
融資審査で幹部が不正を行った疑いが浮上しており、事実なら厳しい処分を免れない。ユニークな経営で「地銀の優等生」と呼ばれたスルガ銀行に何があったのか。
オーナーへの融資は1人当たり数億円
「ふざけるな!」「土下座しろ!」。民事再生法適用を申請したスマートデイズが4月12日、東京都内で開いた物件オーナー向けの説明会。出席した150人以上のオーナーからは怒号が飛び、会場は騒然とした。
スマートデイズは首都圏を中心に1億円以上する投資用シェアハウスを販売。銀行から融資を受けて購入したオーナーから物件を借り上げ、女子学生らに転貸する「サブリース」と呼ばれる手法で急成長した。オーナーには入居者数にかかわらず、約束した賃借料を支払うしくみで、「ローン返済を差し引いても不動産収入が得られる」という誘い文句につられ、約700人がシェアハウスオーナーになった。
ところが、入居者数の低迷で賃借料の支払いは2017年秋から減額され、2018年1月には完全にストップした。スマートデイズは経営破綻し、オーナーには巨額の借金が残された。
スマートデイズの特異なビジネスモデルを二人三脚で推進したのが、スルガ銀行だ。オーナーへの融資は1人当たり1億~数億円に上るといわれ、大半を同行の横浜東口支店が実行していた。オーナーが融資審査の際に提出した書類の預金残高が水増しされるなど、審査に通りやすくなるよう改ざんされたケースが多く発覚している。誰が改ざんを実行したのかについて、スルガ銀行は「調査中」としているが、当時の支店幹部や役員らがスマートデイズ側と結託して不正に関わった疑いが指摘されており、金融庁もスルガ銀行の融資審査体制や、不正を見抜けなかった背景について調査を進めている。
スピード審査が裏目か
スルガ銀行は1980年代から個人向け業務を強化し、素早い審査やユニークな商品展開で注目されてきた。金融庁の森信親長官も、高収益のスルガ銀行をたびたび成功事例として挙げ、地銀業界に「独自のビジネスモデルを」と、スルガ銀を見習うように呼びかけてきたほどだ。
しかし、今回の問題では、スピード審査がずさんな審査につながった可能性が否定できない。日銀の超低金利政策で地銀の収益が圧迫される中、多くの地銀が比較的金利が高いアパートローンに走ったが、スルガ銀行の注力ぶりは業界でも「突出していた」(地銀関係者)。他行の審査に通らなかった人でも、スルガ銀行なら融資が受けられるとして「不動産投資をする個人に人気だった」(同)という。
リスクをとって比較的高い金利で貸し、高収益を上げるビジネスモデルで存在感を高めてきたスルガ銀行だが、その経営姿勢はハイリスクの投資ブームをあおることにもつながった可能性がある。ましてや不正融資に関与していれば、当事者に加え、トップの責任問題に波及するのは間違いない。「地銀の手本」として評価していた金融庁の監督責任も問われそうだ。