放送法4条撤廃論、安倍政権の陰りが議論に影響

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民放は反発、読売新聞も異例の安倍政権批判

   話が表舞台に現れたのは、3月17日の読売新聞朝刊だった。1面に3段見出しで「放送・ネット垣根撤廃 首相方針 放送の質低下懸念も」と載せ、2、3面見開きで「放送 信頼を失う恐れ 『公平』規定を撤廃 フェイクニュース危惧」(3面)、「首相、批判報道に不満か」(2面)と、否定的に見出しを連ねた。特に目を引いたのが2面の記事で、安倍政権支持の論調が目立つ読売が、首相を批判するのは異例。その後、その他の各紙も続々と報道したが、論調は批判一色。「民放事業者が不要と言っているのに等しい」(大久保好男・日本テレビ社長)といった民放の反発を反映したものだ。

   政府側の放送制度見直し論の背景にあるのが、インターネットでの動画配信サービスの急速な普及で放送と通信の垣根が急速に低下していること。ネット企業の放送市場への新規参入促進などでコンテンツビジネスを活性化し、グローバル産業に育てるといった「産業論」が根底にある。放送法4条のほか、放送局への外国資本の出資規制の緩和・撤廃、番組制作部門と放送設備管理部門の「ソフトとハードの分離」なども視野に入っている。

   反対する民放界は、公共性が問われる放送を通信やネットと同様のビジネスベースで捉えるべきでないという立場だ。

   こうした双方の大義名分には、それぞれ問題がある。

   政府側の規制緩和論への最大の批判が、マスコミがこぞって指摘するように、公正な報道を害する懸念だ。実際、安倍政権になって、2014年の総選挙の際の報道に、首相自身が不満を口にし、自民党がNHKと民放各社に「公平中立、公正」な選挙報道を求める異例の要望書を出した。安倍首相自身がネット世論を気にし、選挙の際などネットテレビに好んで出演するが、政党間の公平な取り扱いが重視される放送のような規制がない「利点」を十分に知っているといわれる。

   これに対し、民放の側も、公正な放送を守るという大義名分の一方、規制緩和で既得権が侵されるのを恐れている側面も指摘される。

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