伊藤忠商事が、持ち分法適用会社であるユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)を子会社化する。2018年4月19日発表した。今夏に株式公開買い付け(TOB)を実施し、出資比率を41.45%から50.1%に引き上げる。
金融、インターネットとコンビニとの融合といった新領域に伊藤忠主導で取り組み、王者セブン―イレブンを追い上げる。
1店舗あたりの売上高がセブンに太刀打ちできない
追加の出資額は約1200億円。子会社化後もユニファミマHDの上場を維持する。
伊藤忠が本格的にコンビニに取り組むようになったのは1998年。西友から旧ファミマ株を買い取り、筆頭株主になってからだ。ファミマは2009年にエーエム・ピーエム・ジャパンを完全子会社化したほか、2016年にはサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループHDと合併するなど、M&Aをテコに拡大してきた。
国内店舗数は1万7000店舗を超え、首位セブンの2万店に次ぐ規模に。2018年11月ごろには、サークルKサンクスからファミマへの看板の掛け替えがすべて終了する予定だ。
「商社ビジネス」における「非資源」の割合を徐々に増やしてきた伊藤忠。その大きな柱がファミマだった。最近も段階的にファミマ株を買い増している。
一方、ユニファミマHD傘下で総合スーパーを展開するユニーの株式の4割を、ディスカウントストアを展開するドンキホーテHDに譲渡するなど、他社との連携にも積極的だ。
ファミマの最大の弱点であり課題は、1日の1店舗あたりの売上高がセブンに太刀打ちできないこと。ファミマは52万円で、セブンより13万円以上劣り、店舗数3位のローソンも1万6000円ほど下回っている。サークルKサンクスに至っては38万5000円。ファミマへの看板替えで売り上げの大幅なアップは見込めるものの、上位と差を詰めるのは容易ではない。
商社の子会社だからといって「成果はみえにくい」
セブン独走の最大の理由は、弁当やパン、店内調理の総菜などの商品開発力で圧倒的にリードしているからだといわれている。その商品開発力は、商社の子会社になったから磨かれるわけではない。
伊藤忠の鈴木善久社長兼最高執行責任者(COO)は記者会見で「小売りの展開はプロに任せるが、デジタル化の推進や周辺事業は様々な形で協業する」と語った。コンビニで商品を売るという「本業」部分ではなく、「周辺」部分を進化させ、本業を補おうというわけだ。
ネットや金融との融合という観点では、王者セブンといえど、確たるビジネスモデルがあるわけではない。ここに伊藤忠がセブンを攻略するポイントがあるかもしれない。新事業の創出は、総合商社の得意分野だ。伊藤忠が自らのネットワークを生かし、自らの責任で新たなビジネスモデルを築ければ、セブンに追いつくのも夢ではない。
もっとも、コンビニが商社の子会社になったところで、直ちに効果があるわけではない。2017年2月に三菱商事がローソンを子会社化したが、「子会社化の成果がみえにくい」との声もささやかれる。
三菱商事をライバル視する伊藤忠はどうか。ファミマは消費者ではなく、親会社の方をみて商売し、結局うまくいかないのではないか――。そんな懸念もぬぐえない。