サッカー日本代表を突如解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏が2018年4月27日、日本記者クラブで会見し、自身への不満を日本サッカー協会(JFA)に直接伝えていた代表選手がいたといい、不満があったのは「2人か」と述べた。
ロシア・ワールドカップ(W杯)への出場を決めたオーストラリア戦の後も、「2人の選手ががっかりしていた」という。だがハリルホジッチ氏の話では、JFAからそうしたチーム内の不満について何の相談も受けないまま、いきなり解任が通告された。
「がっかりしていること自体に悲しくなった」
ハリルホジッチ氏の解任は9日、JFAの田嶋幸三会長が発表。理由は「選手と監督のコミュニケーションや信頼関係が薄れた」ためだとしていたが、ハリルホジッチ氏は27日の会見で真っ向から反論した。
「3年前の就任時から、誰とも、特に選手と何も問題はなかった。海外組であろうと、国内組であろうと、常に連絡を取りあっていた。何度電話で話したことだろう」
ハリルジャパンは17年8月のW杯アジア最終予選・オーストラリア戦で勝利し、1試合を残してW杯出場を決定。この試合は攻守の組織が機能したとして高い評価を得ている。だがハリルホジッチ氏はこう言った。
「オーストラリアに勝って予選通過したあの試合の後ですら、2人の選手ががっかりしていた。試合に出なかったということで。その選手は何年も試合に出ていた。だから、がっかりしていること自体に悲しくなった」
このオーストラリア戦で出場しなかったのはMF本田圭佑、MF香川真司、MF柴崎岳、MF小林祐希、DF三浦弦太、DF槙野智章、DF酒井高徳、GK東口順昭、GK中村航輔の9人。かつ「何年も試合に出ていた」選手となると限られてくる。
不満をもらす選手が「2人」いるという旨の言葉はもう一度飛び出している。
「その選手は2人いるのか。不満は2人なのか。私は15人ほどから『(解任は)残念だ』というメッセージを直接もらっている。会長から前もって、『バヒド、問題があるみたいだよ』と言ってほしかった。会長には解雇権があるから解雇自体は問題ではない。ショックなのは、問題を誰も何も教えてくれなかったことだ」
そうした選手が、ハリルホジッチ氏を介さずにJFAとやり取りしていたようだとの話も、次々に明かした。
「何人かの選手が不満をもらしているとは聞いている。会長とやり取りされているようだ。テクニカルスタッフの何人かともコンタクトをとっていたようだ」
「私の知らないところでどういったやり取りがあったかは不明だ。西野朗技術委員長から、『(3月の)ベルギー(遠征)で選手が1人不平不満を言っている』と聞いた」
「一度として、誰も何も言ってくれなかった」
ハリルジャパンでは若手のテスト起用が多く、FW久保裕也やMF井手口陽介など、その中で台頭してきた選手も多い。それも、
「私自身は今までやってきたあの選手に代わる選手がいないかと探してきた。競争原理を取り入れた。ベテランの尻を叩いて、今まで以上に頑張るよう言ってきた」
としており、あえてやってきたことだった。
W杯予選を終えた17年9月からの半年間は、強豪相手の試合を組んだこともあって敗戦が多かった。だが、ハリルホジッチ氏はそれも試行錯誤の結果として前向きに受け止めていた。
「私の頭の中では、W杯に向けた調整だった。中盤(MF)とFWで何かいい解決策はないかと探していた。だから結果のことはあまり頭になかった。あくまでも試合で経験を積ませることができたと思った。結果は良くなかったかもしれないが、いろいろなデータ・情報を引き出すことができた」
3月下旬の欧州遠征ではマリに1-1、ウクライナには1-2で敗れ、田嶋会長はこの結果を受けて解任を決断。自らハリルホジッチ氏の住むフランスに出向いて伝えた。その時のやり取りと動揺を、ハリルホジッチ氏は赤裸々に明かした。
「4月7日だった。パリへ呼び出しがかかり、何の事か分からずにホテルへ出向いた、こんにちはと言って腰かけた。『ハリルさん、これでお別れすることになりました』と言った。最初は『ジョークだろう?』と思った。『理由を仰っていただけますか?』と聞くと、『コミュニケーション不足』だと。そこで私は怒りが湧きたってきた。『え?どの選手と?』と聞いたが、『いや、全般的に』ということだった」
「3年間やってきたあらゆること、監督をしている人間へのリスペクトがないのではないか。一緒にやっているコーチの仲間も同じ思いだった」
すると、田嶋会長への疑問を次々とぶつけた。解任を突然通告されるまで、一切の相談がなかったという。
「会長から言われたことは、『選手やコーチとのコミュニケーションや信頼関係が薄まった』ということだった。なぜか最後の遠征で弱まったようだ。私が疑問に思ったのは『誰』とのコミュニケーションの問題だったのか。選手からはたくさんの励ましのメッセージをもらったのに」
「なぜ(田嶋)会長にしても西野さんにしても、『ハリル、問題があるぞ』と一度として言ってくれなかったのか? 一度として、何かあっても誰も何も言ってくれなかった」
「2月のことだが、海外組の長谷部(誠)、(川島)永嗣、吉田(麻也)らに会いに行った。その時コミュニケーション問題は起きておらず、モチベーションは高かった。なぜかその1か月後、『コミュニケーションの問題』で解任された」
「『技術コミティ(委員会)が(信頼関係の)修復を試みた』と言っていたが、誰も私のもとには来なかった」
「会長はスタッフと話したというが、なぜ(日本人ばかりで)私の(外国人)スタッフとは話をしなかったのか」
最後にハリルホジッチ氏は、「私は『真実を探しに来た』と言ったが、残念ながらまだ見つかってない」と無念さを露わにしていた。