その瞬間、板門店(パンムンジョム)には歓声と拍手が起こった。
2018年4月27日9時30分過ぎ、「歴史的対面」を終え、会談場所へと移ろうとした韓国・文在寅大統領を、北朝鮮・金正恩委員長が呼び止めた。何やら小声で話し合った後、2人は笑顔で手を取りながら、軍事境界線を越え、北朝鮮側へと足を踏み入れたのだ。
30歳超年上の文在寅氏をリード?
この会談においては、金正恩氏が北朝鮮の指導者として初めて境界線を越え、韓国側へと足を踏み入れることが、ひとつのポイントとなっていた。対して文在寅氏の「北朝鮮入り」は、予定にないサプライズだ。
「ひるおび!」(TBS系)が韓国側のブリーフィングの内容として伝えたところによれば、文在寅氏が「私はいつ(北朝鮮に)行けるだろうか」と何気なく述べたところ、金正恩氏が「じゃあ、今行きましょう」と手を引いたのだという。金正恩氏による即興の「演出」に、文在寅氏はうまいこと乗せられた形になる。
この場面以外でも、30歳以上年上の文在寅氏を相手に、金正恩氏が余裕を見せる姿が目立った。対面の瞬間も、険しい表情で北側の施設を出た金正恩氏は、近づいて初めて笑顔を作る。ゆったりとした足取りで歩み寄ると、差し出されたその手を取った。
「会えてうれしいです。本当に興奮しています」
中でも韓国ネットで話題になったのは、「平和の家」に入った金正恩氏が、芳名録にサインする場面だ。「新しい歴史はこれから。平和の時代、歴史の出発点にて」と書き込む間、文在寅氏はその横で笑みを浮かべながら、直立不動の姿勢で待っていたのである。
「ご主人様の決裁を待っている」
この場面が韓国のネット掲示板「イルベ」に転載されると、
「金正恩委員長と補佐官」
「ご主人様の決裁を待っている」
「合成かな?」
などと、嘲笑的なコメントが相次いで書き込まれた。
イルベは文在寅氏に批判的な論調で知られ、大統領府が「閉鎖」に言及するなど、因縁の相手と言っていい。それもあって、北朝鮮側に足を踏み入れたことも、「文在寅、越北(脱北の逆。北朝鮮への亡命を指す)」というスレッドが立つなど、皮肉やからかいめいた投稿が相次いでいる。