先日、あるラジオ番組に出演した。といっても、スタジオには行かずに、10分弱の携帯電話での出演なので、気楽に対応できる。
案件は、財務省の福田事務次官(当時)の辞任に関することだった。
今の国会の惨状は見かねる
まず、福田事務次官の退職金5300万円が高すぎないかというスタジオのコメンテーターからの問いかけだ。筆者は、その感想は人によって違うだろうが、退職金計算は法律によって決められていると答えた。筆者は高すぎるとの答えを期待されていたようだが、元官僚らしい事務的な答えにスタジオは意表を突かれたようだった。
次に、今回のような不祥事に対して、何かすべきことはないかという問いだった。筆者は、20年前に「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」があって、そのときには、大蔵省解体といって、当時の大蔵省から金融行政部門が分離されたといった。
それに対し、そうした意見がなぜ今の財務省の内部から出てこないのかと聞かれた。そのコメントを聞いたとき、組織解体論はその組織から出てくるはずがないだろうと思ったが、ラジオでの答えは、そうした官僚組織の対応は法改正によって行うので、立法府である国会議員がやるべき仕事であるといった。その答えに、スタジオは納得していない雰囲気だったので、今の国会では、野党は(維新を除いて)審議拒否している。官僚の不祥事に文句をいうには、法改正案を提出して対応すべきといった。
正直いって、ラジオ番組の雰囲気になじまなかったのかもしれないが、今の国会の惨状は見かねる。
野党6党合同ヒアリングは「パワハラ」か
吉村洋文・大阪市長が24日午前の衆院厚労委に参考人として出席したが、野党6党は審議拒否で欠席した。先日も、国会で参考人を呼んでおきながら、野党6党は参加しなかったが、これは忙しい中で出席している参考人に失礼だろう。
野党6党は、麻生財務相の辞任などを要求して審議拒否なのだが、驚くべきは自らが共同提出した生活保護法改正案の審議も拒否している。これは、立法府の国会議員としての自己否定になる暴挙だ。
国会議論を拒否しながら、野党6党合同ヒアリングを開き、そこに官僚を呼びだして、連日つるし上げている。
そこに出席している官僚は、国会で政府参考人として答弁する局長レベルではなく、答弁できない課長レベルの人だ。当然のことながら、彼らが役所から与えられている発言権は極めて小さいので、同じ答弁を繰り返さざるをえない。野党6党は、相手の官僚が同じことを繰り返しまともな反論ができないことを知りながら、罵倒している。
この光景はテレビでごく一部は報道されるが、ネット上では全体が流れている。全部を見たら、1時間ほどの野党議員による官僚への「パワハラ」に見えなくもない。
財務省不祥事にはいいたいことが山ほどあるのは理解できる。財務省解体、消費増税ストップなど筆者もいろいろな意見がある。国会議員は、そうした意見を立法によって実現できる。
国会での審議拒否ではなく、まともな法改正対応案を国会に提出して、国会議員としての職務をおこなうべきである。国会場外で答弁能力のない下っ端官僚を怒鳴るより、国会において対応法案を提示し大臣と議論して欲しい。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「大手新聞・テレビが報道できない『官僚』の真実」(SB新書)など。