韓国・釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像の隣に、元徴用工をモチーフにした像を設置する計画が進んでいる。日本政府は「外交関係に関するウィーン条約」の「公館の威厳の侵害等」に関わる問題だとして慰安婦像の撤去を求めている。慰安婦像が撤去されない上に徴用工像が建ったとなれば、さらに外交問題化することは確実だ。
外交問題を懸念する韓国政府と釜山市は設置に反対する一方で、市民団体は設置を強行する考えで、2018年5月1日の設置予定日に向けて、にらみ合いが続いている。
市民6500人から1700万円の募金が集まる
徴用工像の設置を計画しているのは、「積弊清算・社会大改革釜山運動本部」を名乗る市民団体。設置の目的を「日本植民地時代の恥辱的な民族の受難を忘れず、再びこのような歴史繰り返さないため」などと主張している。中央日報や釜山日報など現地メディアによると、市民6500人から寄付金1億7000万ウォン(約1710万円)を集め、すでに像を製作している。
韓国外務省は4月16日、「外交問題を招く可能性」を理由に、総領事館前ではなく、自治体の記念館に設置すべきだとしたのに続いて、19日には「政府レベルで必要な措置を検討する」として、反対姿勢を鮮明にした。釜山市も、像は市内にある国立日帝強制動員歴史館に建設すべきだとの立場だ。
一方で、領事館前の道路を管轄する同市東区庁は20日、徴用工像の設置予定地に「環境整備」を理由に大型の植木鉢6個を突然設置。市民団体は24日、「徴用工像の設置を防ぐためではないか」として東区に抗議し「無用な誤解を招かないために、すぐに移す」ことになった。
こういったことが影響したのか、東区庁の朴三碩(パク・サムソク)区庁長は4月24日、
「市民団体が領事館の前に徴用工像を設置してもしても物理的に撤去することはないだろう」
と発言。中央日報は、この発言の意図を「(撤去すれば)市民感情の理解が得られない」という意味だと解説した。