参考人として国会に招かれたにもかかわらず、野党議員が大量に欠席したことについて、吉村洋文・大阪市長(42)は「非常に残念に思います」と強く批判した。
前財務事務次官のセクハラ疑惑をめぐる麻生太郎財務相への辞任要求などで、国会では大半の野党が審議を欠席する状況が続いている。吉村氏は、「責任追及は大切だと思います」と理解を示す一方で、「重要な法案の審議は別の話」とし、「出席されないのは職務放棄だ」と糾弾した。
「なんで国会議員の皆さんがいないんですか?」
吉村氏は2018年4月24日、生活保護法改正案などの参考人として、衆議院厚生労働委員会に招かれた。冒頭で「この審議の参考人にお呼びいただいたことは、まず感謝を申し上げたいと思います」とすると、野党議員に釘を刺した。
「国民にとってこれだけ重要な法案であるにもかかわらず、この場に日本維新の会以外の野党の皆さんがいらっしゃらないということは非常に残念に思いますし、異議を申し立てたいと思います。国民の立場で見ていますと、国会において、あるいは政府において、さまざまな不祥事が生じ、その不祥事の責任を追及するのは大切なことだと思いますけども、一方でこういった重要な法案の審議は別の話だと思っております。この法案審議に出席されないのは、職務放棄だと思っています」
厚労省の発表によれば、生活保護の受給世帯は増加傾向にあり、2017年度の当初予算額は約3.8兆円にのぼった。自治体ごとの受給率は全国平均1.69%だが、大阪市は5.34%と最も高い。その分、吉村氏は生活保護に関して「先進的に取り組んでいる」と、法案審議に役立てもらいたい考えを伝えた。
だが委員会室はガラ空きだった。野党は、福田淳一・前事務次官のセクハラ疑惑の監督責任をとって麻生財務相が辞任しなければ、審議に復帰しない考え。
吉村氏は呆れたように室内を手で示しながら、
「私自身はこの法案審議を深めたいという思いで、わざわざ大阪市役所の業務がある中で、大阪市から参っています。私が参考人として参っているのに、なんで国会議員の皆さんがいないんですか? おかしいじゃないですか。こんなことを許していること自体が許されないと思います」
と糾弾した。そのうえで「国の法案審議をできるのは国会議員の皆さんしかいないわけであります。ですので、この場にいないということは非常に残念だと、まず申し上げたいと思います」と、「残念」という言葉を繰り返した。
「野党の皆さんと議論したかった」
その後、吉村氏が生活保護に関する実態や課題などについて説明し、自民・公明・維新の各党委員から、それぞれ約15分ずつ質問。吉村氏はこれに答える中でも、「野党の皆さんと議論したかったんですよ」と苦言を呈す場面があった。
「(生活保護受給の)回数、毎月あるでしょう。野党のみなさんに現場へ来てもらいたいですけど、毎月毎月やったらどうなるか想像できるんですかね。たとえば、半月後に生活保護の受給がなくなった時、過払いが生じるんです。毎月の(支給)事務というのはそんなに難しくないですが、過払いが生じると回収しないといけません。この回収事務がどれだけ大変か議論したかったんですけど、いないじゃないですか。おかしいですよ。維新の会以外の野党のみなさんが、この重要法案(の審議の場に)にいない」
「与党の責任追及はやってもらったらいいと思いますけど、法案審議に出てくるように何とかやってくださいよ。おかしいです、こんなの」
話し終えた吉村氏は参考人席に座ってからも厳しい表情を見せていた。
厚労委を終えると、24日のうちにツイッターを更新し、
「サボりだよ、全員集合!」
と皮肉を述べた。今回審議した法案について、
「維新以外の野党も法案を提出してる案件。生活保護に関する法案は重要案件だよ。なんで、国会議員がいないの?いい加減、日程や審議拒否を人質にとって、政治するのやめてくれないかな。国会議員の本分の仕事してよ」
と改めて不満を募らせた。
前日23日のツイッターでは、国会出席を前に「大阪市は自治体の中で生保が最も多い。取組も紹介。法案審議に役立てて欲しい。ただ、僕も激務だから1回しか行かないよ。国会議員しか法案審議できない。ちゃんと出席して法案審議してね」と告知していたが、叶わなかった。
衆院厚労委は25日、生活保護法改正案などを可決。維新以外の野党はこの日も欠席した。