「僕にとって三振というのは、野球の中の一部ですね」
豪快なフルスイングは衣笠さんの大きな魅力だ。その結果積み上げたのが「三振」の数。引退までに通算1587個という当時の日本歴代最多記録を樹立した。
衣笠さんにとって三振はただのアウトではなかった。番組で語っている。
「僕にとって三振というのは、野球の中の一部ですね。仕方ないですよ。諦めているわけじゃないですよ? 少なくとも振る瞬間は当たると信じてるんです。ここをね、時々『お前わざと三振してるのか』という人がいるんですけど、そうじゃない。少なくとも自分では当たると信じて力いっぱい振ってるんですよ」
「それがたまたま当たらないだけですよ」。冗談めかして、くしゃりと表情をほころばせた。
スランプに陥った時、空振りが転じて福となす試合があった。強烈なフルスイングで空振りすると、続く投球で左前適時打、次の打席では本塁打を放った。「ああいう空振りせんかったからね。あれでなんか気持ちが楽になったね」。メモ帳にはこう記録した。
「おまたせしました、というようなスイングが今日は出た。空振りだったけれど、本当に今シーズン初めて気持ちのいい振りだった。おかげでタイムリーとホームランが出たと思う。右側にウェイトを残し、思いっきり振ることが自分のスイングなんだと思い出した。これで本当に悩みが切れてほしいものだ。チームもいいムードだし、僕もこれからだ」
日本で2000試合以上の連続出場記録を持つのは、衣笠さんただ一人。本人は連続出場をどう捉えていたのか。番組では最後にこう話している。
「まあ一番に、いつも僕に仕事があったということですね。野球がしたいと思って、それが仕事になったでしょう。ものすごく幸せなことだ。連続試合出場というのは、野球を仕事に選んだ以上、いつも試合に出ていられるということ。僕にとって一番幸せなことじゃないですか」