中国やインドのメーカーも追い上げ
下氏とVWトラック&バスのA.レンシュラーCEOは東京都内のホテルでそろって記者会見した。下氏は「自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えている。これまでと同じ価値の提供では、これからのお客様のニーズには応えられない。そうした強い危機感を共有した」と提携協議の理由を説明。レンシュラー氏は「事業を展開する地域や商品ラインアップの観点から、とても良い組み合わせ。将来の輸送のあり方を追求するパートナーとしても最良の組み合わせだ」と期待感を示した。
提携交渉に踏み切った背景には、乗用車とは違う商用車ならではの事情がある。世界首位の独ダイムラーは、販売台数だけでなく技術面でも大きくリード。自動運転や電動化で先進技術を持つ。研究開発費は膨大で、日野やVWが単独で追いかけるのは難しい。 さらに中国やインドの新興国メーカーもパイが大きい自国市場でシェアを伸ばしている。技術面でも先進国との差を縮めつつあり、本格輸出に踏み出せばグローバルマーケットの地図を塗り替える潜在力を秘める。
販売面では現在のところ日野は日本と東南アジアで、VWは欧州とブラジルで強みがある。車種を棲み分けるなど販売面で協力が進む可能性は高い。
日野にはトヨタがついているが、「商用車の技術は乗用車の延長線上だけでは対応できない」(下氏)面もある。トヨタの殻を破り、VWと手を組んだ理由がここにある。
こうした事情はトヨタやVW本体も認識しており、全面的な支援を約束しているという。国境を越えた連携が商用車市場にどんな変化をもたらすのか、注目されそうだ。