岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 福音派と大統領の蜜月は続いている

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「神が遣わせたユダヤ人」

   福音派の票を確保するために、トランプ氏は副大統領候補に敬虔な福音派のマイク・ペンス氏を選んだ。最高裁や連邦判事に、保守派を選ぶと公約した。イスラエルの首都をエルサレムと認定、米大使館をエルサレムに移転すると約束した。福音派は聖書の一節を、「神がイスラエルの地をユダヤ人に与えた」と解釈しているからだ。

   メガチャーチの伝道師たちは宗教アドバイザーとなり、トランプ氏に福音派の考えを伝えた。そして大統領になってからも、トランプ氏を擁護する発言を繰り返してきた。

   テキサス州ダラスのロバート・ジェフレス牧師は、「福音派は十戒を信じている。ポルノ女優と不倫などすべきではない。だが、それとトランプ氏の政策や強いリーダーシップへの支持は、まったく別問題だ」と語った。

   カリフォルニア州の教会のデイヴィッド・ジェレマイア牧師は、「キリスト教徒を助けるために、若いユダヤ人カップルを神が遣わせた」とし、ジャレッド・クシュナーとイヴァンカ・トランプをナザレのヨセフ(聖母マリアの夫)と聖母マリアに例えた。

   ジョージ・W・ブッシュ元大統領のスピーチライターで福音派のコラムニスト、マイケル・ガーソン氏は、2018年3月、アトランティック・マンスリー誌に掲載された長文エッセイで、「隣人を愛すべき私たちが、人種差別主義、性差別主義、白人至上主義で非道徳的なトランプ氏を支持・擁護し続けている。最悪な指導者たちから今すぐに、信仰を救わねば」と福音派組織を厳しく非難している。

   しかし、2018年4月の世論調査でも、福音派の白人の8割が未だにトランプ氏を支持している。

   福音派とトランプ氏の蜜月の関係は、果たしてどこまで続くのか。


(随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。


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