岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 福音派と大統領の蜜月は続いている

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「税金」ではなく「寄付」

   実際に礼拝に参加してみるとわかるが、コンサート会場で感じるような高揚と連帯感を覚える。前回の記事で触れたように、牧師の説教は聖書に沿ったもので、内容はとくにほかの教会と変わらなかった。上から目線でなく、私たちのひとりとして語りかけるようで好感も持てる。スタッフも皆、明るく感じがよい。

   オハイオ州在住のジェリーとアルは、寒い冬の間だけフロリダで暮らす。フロリダで通う教会を探すためにさまざまな教会の礼拝に参加してみて、気に入ったのが、たまたまメガチャーチだった。聖書に沿った引き込まれるような牧師の説教と、プロに近い活気のある音楽が決め手になったという。

   この教会では洗礼の時、身体を水に浸す。「イエスが同じように洗礼を受けたのだから」とジェリーが語るように、バプティストにとっては当然のことだが、それを知らないと異様に感じるかもしれない。

   メガチャーチは大きいだけではない。その下に小さなグループがあり、個々のニーズにも応えている。「独身者」、「既婚者」、「家族」など、それぞれが同じ立場の仲間と出会い、参加できるスポーツやアートをはじめ、さまざまなイベントも用意されている。ハリケーンなどの災害では真っ先に、精神的にも物質的にも援助の手を差し伸べた。失われつつあるコミュニティの役割を、メガチャーチが果たしてきた。

   保守・キリスト教右派の多くは共和党支持者で小さな政府を望んでいるが、貧困などの社会問題に関心がないわけではない。旧約聖書の記述をもとに、収入の10%を寄付すべきとする人は少なくない。実際にはその割合に個人差はあるものの、収入の一部を「神に返す」のは当然のこととほとんどの人は考えている。

   政府に強制的に税金を取られたくはないが、寄付やボランティアという形で自分の意志で社会に貢献することはいとわない。地球レベルの関心はないかもしれないが、少なくとも自分たちが住む地域のなかで、助け合いの精神は培われている。

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