防衛省にはアウェイ感
――2度目の戦闘、2016年7月ですが、三浦さんはその後、現場に行きましたね。
三浦 政府は「戦闘はなかった」というスタンスでしたが、実際に現場を訪れると、自衛隊の基地のすぐ隣の建物で銃撃戦が起きていた。もちろん自衛隊は、激しい撃ち合いが起きているのを、間近で見ているはずです。あるいはRPG(携帯対戦車擲弾発射器)の撃ち合いなんか見ているのかもしれない。PKO部隊と南スーダン政府軍との間で交戦があった可能性も指摘されています。
今回の南スーダンPKOは、すごく検証する必要があると思います。布施さんがおっしゃったように、いま文民保護というものがPKOの柱になっている。武器を持って闘うことを前提としたPKO。じゃあ日本の自衛隊はそれに加わることができるのか。事実を隠し、政治家たちは聞こえのいい「復興」といった言葉を頻繁に使う。復興に加わるんですって言われると、災害国・日本は、よし、じゃあがんばろうかっていう風になりがち。でも実際には単なる復興ではないですからね。戦闘を戦闘によって止めるみたいな部分を多分に含んだ「復興」。それゆえに、現場は事実を事実としてしっかりと報告し、それを受けて国会や政府や議論や判断を行わなければならない。
――それほど危険な状況があったのに、撤収しなかった理由はなぜでしょう。防衛省は自衛隊員を準戦闘態勢に慣れさせるというか、わざと模擬の実戦訓練をさせているのでしょうか。
三浦 そんな感じじゃなかったですよね。自衛隊の人って言うか、防衛省って、PKOではアウェイ感があるんですよ。そこは基本的には外務省のフィールドなんだと僕は感じましたね。例えば日本の国防や災害なら、防衛省が先頭に立って「防衛省に任せろ」って言うことはできるんだと思うのですが、PKOって何か国益っていうものを意識している部分がかなり大きくて、外務省の人たちの発言力が大きいように感じるんです。防衛省っていうのは、どちらかというと、実働部隊みたいなイメージがあって。表現はよくないかもしれないけど、仕事を請け負っているみたいな。
――やらされているっていう感じですか。
三浦 実態とすると、外務省が国際的に、プレゼンスを示したいっていうのはあるんだと思うんです。それと官邸の意向。改憲に向けてですね、自衛隊を外で使えるようにしたい。その中で、防衛省は、官邸や外務省に比べてどこかアウェイ感があるなと感じていました。現地に行っている人たちは皆一生懸命やっているんですけど、どこか言いくるめられてしまっている。