『日報隠蔽』の著者に聞く(上) 「PKO日報」、だれが隠したのか?官僚にとって「国民は敵」なのか

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取材に行きたいが、ビザが出ない

――布施さんは、情報公開って前々からやっておられますよね。それは何か、端緒っていうのがあったんでしょうか。

布施 そうですね、いまイラクPKOの日報問題が話題になっていますが、実は私もかなり前にイラクには2度ほど取材で行って、いろいろ見てきているんです。2004年に人質事件が起きましたよね。日本人のエイドワーカー(人道支援者)やジャーナリストが現地で拘束されましたが、知り合いもいたので、他人事とは思えませんでした。
 その時に、当時自衛隊がいたサマーワから、防衛記者会に所属しているマスコミが全部、自衛隊に輸送してもらって、国外に出たんです。危なくなったからということで。以後も、自衛隊はイラクで活動を続けていましたが、現地がどうなっているかという一次情報がほとんど出てこなくなった。フリーの記者が入ろうと思っても、ビザが取れない。

――現地の状況がわからない状態が続いたわけですね。

布施 自衛隊がいたところは、「非戦闘地域」のはずなんですが、同じ地域で活動していたオランダ軍兵士が多国籍軍の占領に反対する地元の武装勢力の襲撃を受けて亡くなったりしている。これは「非戦闘地域」とは言えないだろうと思っていたんですけど、現地に行けない。であれば、情報公開制度っていうのを使って、自衛隊自身はもちろん現地の状況を記録しているはずですので、そういうものをちょっと引き出せないかな、と思ったのが最初ですね。
 やっていくうちに、なかなか出てこないんですけども、防衛省側のいろんなミスとかもあって(笑)出しちゃいけないものを出しちゃったりとかですね(笑)そういうこともたまにあって。それなりに数をやっていけば、メディアで報道されてないような事実も出てきたりしました。徐々にですが、情報公開制度の有効性っていうのを感じていた。 そういう延長線上で、この南スーダンに関しても、本当のところは現地に行きたかったんですけど、情報公開制度も使いながら、政府が隠している実態っていうものを、引き出せたらいいな、引き出したいなと。

――なるほど。

布施 特に、2015年の9月に安保関連法が成立して、これまでの日本の安全保障ができなかったことを、解釈を変えることでできるようにしちゃったわけですよね。集団的自衛権もそうですし、PKOで言うと、駆けつけ警護っていうのも、これまで「できない」って言っていたものを、憲法を変えずに解釈を変えて、できるようにしてしまった。
 それを最初に、南スーダンで実行するというのは非常に重要な問題だし。やっぱり現地の状況や、本当にPKO5原則が維持されているのかを検証する必要があるなと思い、いろんな文書の開示請求を始めたわけです。
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