働き方改革めぐる「深い溝」 大手紙の論調が割れるテーマ

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「効率的な働き方を促す」VS「これでは過労死防げぬ」

   同様に、基本的に法案推進の立場の読売が、「国民の不信感払拭に努めよ」と、珍しく慎重な対応を求めるのは、裁量労働撤回に追い込まれた経緯に配慮したもの。「働き方改革の実現には労働行政への信頼が不可欠だ。政府は、国民の不信や懸念に真摯に向き合い、丁寧な説明で払拭に努めねばならない」と、政府の対応への不満を示す。

   特に懸念するのが、厚労省東京労働局が2017年末に裁量労働制を不当適用していた野村不動産への特別指導を公表したこと。その後、不当適用された社員が過労自殺で労災認定されたことが判明し、野党が、政府が過労自殺を伏せて、裁量労働制拡大に都合のいいことだけ公表し、悪い事実を意図的に隠したのでは、と追及している問題だ。読売は「働き方改革を担う厚労省が、これ以上、法案成立の足を引っ張ることがあってはならない」と苦言を呈しつつ、高プロについては「仕事の多様化に対応し、効率的な働き方を促す狙いは、時宜にかなっている」と、必要性を訴えている。

   これに対して、朝日「労働者保護に焦点絞れ」、毎日「残業時間の規制が原点だ」、東京「これでは過労死防げぬ」は、そろって、高プロに「長時間労働を助長しかねないと、多くの懸念や不安の声がある制度だ」(朝日)などと疑問を呈し、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する」(東京)などと、一様に、『セット販売』を批判。

   また、野村不動産をめぐる「情報隠し疑惑」にも3紙はそろって言及し、毎日は「現実には残業代を抑えるため、裁量労働を適用できない人に適用して長時間労働をさせることが横行している。......現実に起きている弊害を認めず、メリットばかり強調するから矛盾が露呈する。これでは政府案に不信が深まるばかりだ」と、政府の対応への不信を強調。

   朝日は「高プロを関連法案から切り離せば、与野党が歩み寄り、話し合う余地は生まれるはずである」、東京は「高プロは法案に盛り込まれた。野党から『スーパー裁量労働制』だと批判もでている。法案は国会論議を通し再考すべきだ」、毎日も「野党側は関連法案にある高プロも(野村の過労死と)同様の事態が起きることが懸念されるとして反対しており、国会審議の紛糾は避けられないだろう。まずは、弊害に対して徹底した是正策を講じるのが筋ではないか」と書き、表現の強弱はあるが、基本的に法案からの高プロ切り離しを求める姿勢だ。

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