わずかな沈黙の後、首をかしげ、軽く「トンッ」と音を立てて机に両手を置いた。気持ちを切り替えるように、次のニュースを読み上げる。
小川彩佳アナウンサーが2018年4月19日放送の「報道ステーション」(テレビ朝日系)で見せたこの仕草には、インターネット上で憶測が飛び交った。自身と同じ「テレビ朝日の女性社員」が福田淳一・財務省事務次官からセクハラ被害を受けていたという、他人事ではないニュースを扱った直後だったからだ。
テレ朝の対応「ギリギリセーフだった」
テレビ朝日は19日未明の会見で、週刊新潮で報じられた福田次官のセクハラ疑惑について、同局の女性社員が被害者だと発表した。
テレ朝の対応には疑問も指摘されている。女性社員は次官と1対1の会食を「1年半ほど前から数回」していたといい、その度にセクハラ発言があった。身を守るために会話を録音し、セクハラの事実を報じるべきと、上司に相談した。だが、二次被害の心配などを理由に、報道は許されなかった。女性社員は黙認され続けるのをおそれ、週刊新潮に連絡した。
女性社員によるセクハラの訴えが、反故にされていた形となる。
「報ステ」では、富川悠太アナウンサーがテレビ朝日の対応の是非を問うた。ジャーナリストの後藤謙次氏は、「女性記者から相談を受けたときの対応は大いに反省してもらいたい」とする一方、「記者会見をして事実を公表した。これギリギリセーフだった」と擁護した。
一方、後藤氏はセクハラ「否定」を続ける福田氏を強く批判、さらに麻生太郎財務相の責任についても「非常に大きいと思います。まず任命責任が当然あります」とし、「このセクハラ疑惑については、一貫して次官の立場に立っています。被害者の立場に立ってきちっと対応しようとしているのか」と追及した。さらに「財務大臣としてやるべきことは非常にあるのですが、その優先順位や戦略が全然見えてこない」。小川アナは後藤氏のほうを向き、うんと頷いた。
さらに富川アナが「安倍政権のダメージにもなり、安倍さんがいなかったときにこういうことが起きてしまったこともまた...」と言いかけると、後藤氏は「大きいと思いますね」。
セクハラ問題の放送はここまでだったが、気になる仕草が見られたのはこの後だった。
小さく溜め息を吐くと、眉間にしわを寄せ、口を結び、首をかしげた
小川アナが1ショットで映されると、2秒足らずだろうか、少し間が空いた。小さく溜め息を吐くと、眉間にしわを寄せ、口を結び、首をかしげた。
大きく息を吸い込んでから、両手を机の上に置いたとき、「トンッ」という音がスピーカー越しにはっきりと聞こえた。大きく身を前に乗り出した小川アナは、気持ちを切り替えるように、低いトーンで「さて、続いてのニュースに参ります」。立ち上がってニュースを読み始めると、ほどなくしていつもと変わらぬ調子に戻った。
ツイッターやネット掲示板をみると、小川アナのこの挙動は、
「なんでキレてるの?」
「ブチ切れてる」
「小川 彩佳なんとなく、うんざりしてる感じがしたのは気のせいかな?」
と、怒りをあらわにしたという印象を与えた。
怒りの矛先がどこに向けられたのかも定かでない。直前に後藤氏と富川アナによる政権批判のコメントが続いたことから、政府への不満という可能性もある。
一方で「後藤の『ギリギリセーフ』を聞いた小川アナが次の話題に行くとき、怒った様な、ムッとした顔で立ち上がりませんでした?」と、やや穿った見方をするユーザーもいる。同じ「テレビ朝日の女性社員」として、セクハラの訴えを一定期間放置してきた同局を「ギリギリセーフ」と評されたことへの疑問ではないか、と捉えたようだ。また、「小川彩佳さん、このセクハラニュース後、首を傾げて何か言いたげだったな」と、セクハラ問題にコメントできずに終わったことへの歯痒さを感じ取ったユーザーもいた。