「はっきり言って、テレビ朝日の報道の信頼は地に落ちたと言っても過言ではない」
こんな力強い言葉で自社に「モノ申した」のは、テレビ朝日の小松靖アナ(43)だ。財務省の福田淳一事務次官からセクハラ被害を受けていた女性記者への対応について「この記者を守り切れなかった」などと語り、反響を呼んでいる。
「奥歯に物が挟まったような言い方」で...
2018年4月19日生放送のネット番組「AbemaPrime」(AbemaTV)では、テレビ朝日が同日未明に開いた、自社の女性記者が福田氏からセクハラ被害を受けていたと告発する記者会見の模様を、ノーカットで放送した。
番組司会の小松アナが、国際政治学者の三浦瑠麗氏や元毎日新聞記者の上谷さくら弁護士ら、ゲストコメンテーターに見解をたずねる形で、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を展開。放送時間の約2時間いっぱいをこのセクハラ問題に費やした。
そんな中、女性記者は取材対象者とどのような間合いをはかるべきか、との議論を展開していた時だ。小松アナは淡々とした口調で「今回の件で、メディアの取材の仕方の問題点も浮き彫りになっている。こういう言い方をしながら、(自分のことを)卑怯だなと思っている」と切り出した。
「私は当事者の一部なので、奥歯に物が挟まったような言い方で。コメント欄にも『小松さん、きょうおとなしいな』とか『歯切れが悪い』とか『びくびくしている』とか。正直、そうです」
小松アナは「ただ」と続け、「見て下さっている皆さんと色んなニュースに触れながら『本当はこう思いますよね』という、地上波と違う本音で話そうよという、AbemaTVでやっている中で、今日だけは違うんですか、と思われることが苦しいですし、でもそれは我々自身の自己責任だと思う」とキッパリ。その上で、
「はっきり言って、テレビ朝日の報道の信頼は地に落ちたと言っても過言ではないと思います」
と強調した。
「身から出たさびだと思っている」
続けて、小松アナは「地に落ちた」と考える理由について
「取材対象者に対して、無断で録音し、それを取材で得た情報と位置付けて、それに基づいて報道してしまうような放送局なのじゃないかという不信感。あるいは所属している従業員に対しては、業務を遂行する中で得る身体的、心理的なダメージに対して、会社が何ら守ってくれないという不信感」
と説明。
「テレビ朝日はセクハラの被害者である女性社員を抱える、いわばセクハラの被害者だという構造があるのと同時に、この女性記者を守り切れなかった。この女性記者からすると、福田事務次官もテレビ朝日も自分を被害者にした相手なのだ、という構造が成り立ってしまう」
と持論を展開した。その上で「それがいつも通り(番組を)展開できない理由です」とし、
「でも、それは身から出たさびだと思っています。だからこそ今回の問題に、私だけが気張ってやるわけじゃないですけれども、テレビ朝日の社員として、テレビの人間として、向き合わなければいけない。一から出直さなければいけないと思いました。すみません、私の独白になってしまいました」
と締めくくった。
こうした小松アナの「独白」内容はツイッターで拡散され、
「小松アナの『テレ朝は地に落ちだった』発言。会社員なのによく言ったな」
「小松アナ、言葉を選んでるけど自社を誰よりも強く批判している。どうか潰されないように生きてください」
「小松アナはあのテレ朝の中にいて こういう発言出来る。保身に走らない良心的な こういう人こそメディアに必要ですよね」
など、一メディア人として称賛する声が続出。その他にも
「昔TBSで筑紫哲也が似た様な反省の弁を述べていたのを思い出しました」
「小松アナ すこしエモーショナルになりすぎかな?」
「彼は朝日にとってのガス抜き的な役割を担ってると思えなくもない」
など、さまざまな意見が寄せられていた。なお、上記にある「反省の弁」は、1996年のTBSオウムビデオ事件の公表直後、故・筑紫哲也さんが「NEWS23」で「TBSは今日、死んだに等しいと思います」と語ったことを指すと思われる。
富川アナは「どう思いますか」と後藤謙次氏に丸投げ
今回のセクハラ告発に関するテレビ朝日の対応をめぐっては、19日放送の同局番組「報道ステーション」でも、共同通信社・客員論説委員の後藤謙次氏が言及している。
番組司会の富川悠太アナから「テレビ朝日の今回の対応について、率直にどう思いますか?」と聞かれ、「女性記者から相談を受けた時の対応については、大いに反省してもらいたいと思いますね」。その上で
「ただ今回、記者会見をして、事実を公表した。これでギリギリセーフだと、そんな気がしますね」
と述べた。
女性記者が福田氏との会食で録音し「週刊新潮」に持ち込んだことについては、「記者としての職業倫理が問われているという声がありますが、そうは思わない」とコメント。
「この女性記者が自らセクハラから身を守るために、途中から録音テープを出した、と言っていますね。その時点で、それは取材行為でなくなってしまう。そもそも記者の倫理の範疇に入らない問題ということで、彼女の意を汲んだテレビ朝日側の対応もギリギリセーフだったなと思いますね」
と、「ギリギリセーフ」を繰り返した。