政府専用機ではEUに乗り入れできない
これらの都市は、いずれも北朝鮮が何らかの形で日本や米国の外交的やり取りがあった場所だ。例えばストックホルムでは、14年に北朝鮮が拉致被害者の再調査を約束した日朝合意が結ばれた。ジュネーブではあらゆる国際会議が開かれ、北朝鮮も拠点を置いている。モンゴル・ウランバートルでは、14年に拉致被害者の横田めぐみさんの両親、横田滋さん・早紀江さん夫妻と、めぐみさんの娘キム・ウンギョンさんとが対面している。
拉致被害者の曽我ひとみさんと、北朝鮮に残されたままだった夫のジェンキンスさんら一家が04年に対面を果たしたのは、インドネシア・ジャカルタだった。当時の報道によると、(1)日朝両国の大使館がある(2)医療設備が整っており、体調面が不安視されていたジェンキンスさんをサポートする体制が取りやすかった、などが重視されたという。米国大使館はジャカルタにもあり、米朝が接触しやすい環境だと言えそうだ。
ただ、問題となるのが正恩氏の「足」だ。北朝鮮は、国営高麗航空が所有する旧ソ連製のイリューシン62M型機を政府専用機として使用している。1960年代に開発された旧式機だ。18年2月の平昌五輪の際は、韓国・仁川国際空港にも飛来した。米朝首脳会談の際にも北朝鮮は政府専用機の使用を検討するとみられるが、高麗航空の同型機は安全基準を満たしていないとして、欧州連合(EU)域内の乗り入れを禁じられている。
航続距離も問題になりそうだ。イリューシン62M型機の航続距離は、貨物などを最大限積んだ場合で約7800キロ。平壌からジャカルタまでは約5400キロで比較的余裕があるが、ストックホルムとジュネーブはそれぞれ7200キロ、8800キロで、かなり苦しくなってくる。EUに乗り入れられる新しい機材を中国やロシアからチャーターする可能性もあるが、盗聴対策や指導者としての体面の問題など、クリアすべき課題は残る。