漫画家と出版社で異なる「ブロッキング」の見方
「海賊版サイトなど悪質な侵害行為に関しては、これからも刑事・民事両面で厳しく対応してまいります」(集英社)
「海賊版サイトを始めとするあらゆる権利侵害行為に対して、講談社は今後も刑事告訴や民事での提訴など断固たる姿勢で臨んでまいります」(講談社)
「海賊版サイトをはじめとする悪質な著作権侵害行為に対して、当社は今後も関係各機関と 連携しながら断固として戦う姿勢で厳しく対応してまいります」(KADOKAWA)
政府が13日に方針を明らかにして以降、出版社は立て続けにブロッキングについての声明を発表している。内容は共通しており、ブロッキングを海賊版対策の一歩と評し、今後も厳しい対応を続けるというものだ。
一方、ちばさんや、漫画家の業界団体である一般社団法人マンガジャパンは、
「しかし僕たちは表現者として常に大切にしてきた『表現の自由』や『知る権利』において、今回の『ブロッキング』という手段が諸刃の剣になりかねない、と危惧してもいます」(ちばさん)
「今回『違法サイトブロック』の措置が取られる動きについて、『生み出す側』としてはとても心強い支えだと受け止めました。しかし、同時に、そのような形でブロックすることが『表現の自由』を損なう方向につながるのではないかという不安も感じています」(マンガジャパン)
と、ともに「表現の自由」の観点から、海賊版サイトのブロッキングそれ自体に慎重な姿勢を取っている。
ちばさんは漫画家の団体である公益社団法人漫画家協会で理事長を務めているが、団体としての声明は16日現在発表されていない。このことに関して、同協会の理事を務める漫画家の赤松健さんはツイッターで、
「公益社団法人『日本漫画家協会』は、理事会を通さないと公式声明などを出しにくいため、一旦ちばてつや先生が個人として声明を発表」
と見解をつづっており、ちばさんやマンガジャパンの漫画家側と出版社の声明のトーンの違いを
「マンガ系の権利者団体は『政府の発表はとても心強いが、手法(ブロッキング)には不安も』という内容。出版社は『大きな前進であり、今後も厳しく対応していく』としながらも、手法についての言及は微妙に避けた。良いと思う。ここからの入念かつ素早い議論が求められる」
と、まとめた。
政府はブロッキングを緊急避難措置と位置付けており、それと並行して次期通常国会での成立を目指して法整備を進めるとしている。