日本ボクシング史上初めて「体重超過」で世界王座を剥奪された比嘉大吾には厳罰処分が見込まれているが、大幅な体重超過の末に山中慎介を破ったルイス・ネリとの比較で、比嘉を擁護する意見がある。
元世界3階級王者の長谷川穂積氏は「ネリは明らかに楽をし余裕を残し計量したのに対し、比嘉選手は汗が一滴も出ないぐらい限界の減量だった」と、比嘉の置かれた立場を慮った。だが、総合格闘家の青木真也は「評価のモノサシに好き嫌いが入っている」として、こうした擁護に反発した。
長谷川穂積「汗が一滴も出ないぐらい限界の減量だった」
世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者だった比嘉は2018年4月14日、クリストファー・ロサレス(ニカラグア)とのタイトル戦の前日計量で、リミット(50.8キロ)から900グラムのオーバー。2時間後に再計量が行われる予定だったが、所属する白井・具志堅スポーツの具志堅用高会長が1時間半の時点で「汗一つ出ません」と断念し、王座剥奪が決まった。ロサレスは一発パスしており、比嘉も当日計量はリミット(55.3キロ)を600グラム下回ってパスし、15日の試合開催が決定した。
比嘉は勝っても王座奪取とはならないが、日本新記録の16戦連続KO勝利もかかった。だが、試合を終始有利に進めたのはロサレスだった。リズムよくコンビネーションを繰り出し、一方の比嘉は単発ばかり。フジテレビの中継で伝えられたところでは、2ラウンド(R)終了時点でロサレス陣営は「もう勝てる」と言って送り出した。
比嘉の劣勢は明らかだった。8Rを終えて開示されたジャッジは76-76、75-77、73-79と遅れを取り、比嘉陣営は9R1分すぎに棄権を選択。会場の横浜アリーナは静けさに包まれた。比嘉は王座も連続KO記録も失った。具志堅会長は報道陣に「私の責任」と語っている。
試合間隔を3~4か月は空けるのが一般的な現代のプロボクシングにあって、比嘉は具志堅会長らの判断で、約2か月の短さでこの試合に臨んだ。1か月余りで約12キロ減量しなければならなかった。比嘉は17年5月の王座獲得戦でも過酷な減量を経験し、心身の負担からパニック障害も起こしたという。フライ級より2階級上のバンタム級(体重にして約3キロ多い)でやりたがっているとの話もある。
元世界3階級王者の長谷川穂積氏は、15日の試合前、インスタグラムで「比嘉選手計量オーバー もちろんあってはならないこと。短いスパンの試合は減量にとってはプラスになることが多いが、今回みたいにマイナスになる場合考えられることは、前回の減量の過酷さをリセットする前に試合が決まったことかもしれない」と責任を問いつつ、
「これは勝手な意見だかネリと違うところはネリは明らかに楽をし余裕を残し計量したのに対し、比嘉選手は汗が一滴も出ないぐらい限界の減量だったということ 比嘉選手をかばうわけではないがフライ級の減量は毎回もうギリギリの戦いだったと思う」
と、ルイス・ネリを比較に出した。