慈恵医大病院が「医療過誤」に画期的な対策  「診断報告書」要約して患者に交付

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   東京慈恵会医大付属病院(丸毛啓史院長、1075床)は画像診断部、内視鏡部、病理部が作成した診断報告書を要約し、原則として全ての患者に交付することを決め、2018年 4月から実施に踏み切った。画像や病理検査で患者のがんが見つかっていながら医師間の連絡不十分のため放置されるという医療ミス事件が続いたことからの対応だが、思い切った改善策は全国の病院の注目を浴びそうだ。

  • 画像は慈恵医大柏病院(Wikimedia commonsより、Waka77さん撮影)
    画像は慈恵医大柏病院(Wikimedia commonsより、Waka77さん撮影)
  • 画像は慈恵医大柏病院(Wikimedia commonsより、Waka77さん撮影)

肺がんの発見が遅れた

   一番のきっかけは、肝臓病で同病院に通院していた70歳の男性患者が貧血で、15年10月夜、救急入院してきたこと。CT検査で肺に異常が見つかり、当直医は診断報告書に記載した。しかし、翌日から担当した肝臓病チームは画像は見たものの診断報告書は読まず、患者は退院後も 1年間通院したが気づかれないままだった。16年10月に再入院した時に撮影したCT検査で肺がんが確認、手遅れで17年 2月に亡くなった。

   この患者は05年に妻を別の病院の医療事故でなくしていた。それ以後、被害者団体である「医療過誤原告の会」の役員として、医療事故を無くす活動を続けていただけに、大きな話題になった。また、遺族や原告の会は再発防止を強く求めていた。

   同病院ではこのケースの他に 5例の見逃し例があった。外部委員も含めた診療情報共有改善検討委員会が調査分析を進め、17年 6月、委員会は報告書のコピーを患者に交付するなどの対策を答申していた。

   同病院では18年 1月から電子カルテを導入したこともあり、患者に分かりやすく表現した患者用診断報告書を主治医が患者に交付する機能を加えた。また、こうした運用のための職員も配置した。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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