成人向け漫画、いわゆる「エロマンガ」の研究書『エロマンガ表現史』(稀見理都著、太田出版)が、北海道で「有害図書」指定されたことが物議を醸している。
識者からは「行き過ぎではないか」と北海道の決定に疑問が上がっている。
「触手」や「擬音」などの歴史を調査
筆者の稀見理都さんは美少女コミック研究家として知られる。これまでも「エロマンガ」にまつわる著書などを発表してきたが、本書ではその「表現」に注目し、女性キャラの胸の描かれ方や擬音語・擬態語、しばしば登場する「触手」や「断面図」といった要素などについて、表現の誕生や変遷、拡散、そして海外も含めた影響の伝播などを、漫画家たちへのインタビューも交えて調査している。「エロマンガ」の図版も多く引用されているものの、大半は文章による考察だ。2017年11月に刊行されるとともに、ネットメディアを中心に複数の媒体でも取り上げられるなど、数少ない「エロマンガ」の本格的な研究書として注目を集めている。
稀見さんは、「はじめに」および「あとがき」で、「マンガ研究」がポピュラーなものになる中、エロマンガの研究だけは「アーカイブ」の未整備、そして「エロの壁」と呼ぶ精神的な忌避により、「暗黒物質(ダーク・マター)」として放置されていることを指摘、
「エロマンガの視覚表現に特化したマンガ研究をすることは、マンガ表現全般の理解に繋がると筆者は強く考えている」
とその意義を訴える。
ところがこの書籍を、「有害図書」として指定する自治体が出た。北海道だ。