公文書管理をめぐる衆院予算委員会の集中審議で佐伯(さいき)耕三・首相秘書官が野党議員にヤジを飛ばした問題で、西村康稔官房副長官は2018年4月12日、佐伯氏を厳重注意したことを明らかにした。
ヤジを飛ばされた希望の党の玉木雄一郎代表は「国会をナメるなと言いたい。無茶苦茶」と怒り心頭だが、佐伯氏については「とても優秀でざっくばらんな関西人」といった別の評価も聞こえてくる。
第1次安倍政権でも今井尚哉氏と一緒に働く
玉木氏は2018年4月11日の集中審議で、玉木氏の発言中に佐伯氏が「違うよ!」などと発言したとして、「秘書官がヤジを飛ばすな!」と激高。その後もツイッターで
「安倍総理は総理席からよく野次を飛ばすが、秘書官も飼い主に似るということか。総理秘書官がヤジを飛ばすなど前代未聞の不祥事。国会をナメるなと言いたい。無茶苦茶」
などと怒りをぶちまけた。
佐伯氏は灘中高から東大を経て1998年に経済産業省に入省。経産相出身の今井尚哉秘書官の16年後輩にあたり、2人は第1次安倍政権でも一緒に官邸で働いている。
第2次安倍政権では内閣副参事官として安倍晋三首相のスピーチライターを務め、
「知る人ぞ知る黒子」(2016年6月21日、日経電子版)
「安倍の演説に各省の主張の継ぎはぎ色が薄く、良くも悪くも個性が出るのは、宰相の言動や心境をつぶさに観察する書き手のなせる技だ」(同)
と評された。佐伯氏が秘書官に抜擢されたのは17年7月。当時佐伯氏は42歳で、事務担当の首相秘書官としては最年少だった。
「総理と一心同体という気持ちで仕事」
佐伯氏の言動に批判が集まる中、旧通産省出身で、旧民主党政権時代に官房副長官を務めた松井孝治慶大教授は、玉木氏のツイートを引用しながら、
「現場を見ていないので、何とも言えないのですが、佐伯氏はとても優秀でざっくばらんな関西人。総理の名スピーチライターでもある。どんな内容の野次だったのでしょうか?彼なら耳打ちでなく大きい声で総理に助言するということもあり得ますが、失礼な内容だったのでしょうか?」
と佐伯氏を弁護。それ以降も佐伯氏をめぐる批判は続き、松井氏は
「自民党で政権あれ(原文ママ)民主党政権であれ総理秘書官は総理と一心同体という気持ちで仕事をしている人物もいて、国会論戦がヒートアップしてくると、思わずそれは違うとか口走る事例も見てきました。彼は人柄的にそのあたりの抑制が効きにくいタイプかもしれません」
などと解説した。
2月にもヤジを飛ばしていた可能性
なお、佐伯氏がヤジを飛ばしたのは、今回が初めてではない疑いがある。立憲民主党の蓮舫参院議員は、4月13日、18年2月26日の衆院予算委員会のものとみられる議事録の写真つきで、
「経産省の佐伯秘書官の野次。2月には長妻さんにも野次っていました。事務方が国会で質問議員に野次とはあり得ない。本人は『首相への助言』と言うが1mも離れた自席から助言など、ない」
などとツイッターで非難。議事録では、長妻氏が
「いや、秘書官の方が今やじをおっしゃるので、何ですかね」
「ちょっと秘書官の方、気になるのでやじをやめてください」
と訴えている。ただ、この秘書官が佐伯氏のことを指しているかは必ずしも明らかではない。
この2件以外にも、過去の国会議事録から確認できる限りでは、16年10月27日の衆院TPP特別委員会で、民進党の福島伸享議員が
「何か後ろから秘書官がやじるんですよ。前代未聞ですよ。秘書官がやじるのはやめてくださいよ」
と発言している。