将来の日本がどのエネルギー源にどれだけ頼るのかを巡る議論が進んでいる。経済産業省が二つの有識者の組織で検討しており、太陽光など再生可能エネルギーを主力電源にする大きな方向性ははっきりしているが、原発の位置づけなど、相変わらず曖昧さも付きまとう。
議論の舞台は、法律に基づく諮問機関である「総合資源エネルギー調査会」(経済産業相の諮問機関)の基本政策分科会(分科会長・坂根正弘コマツ相談役)と、有識者の意見を聴くために設けた「エネルギー情勢懇談会」(委員8人)の二つ。
「エネルギー基本計画」の改定作業
エネ調分科会は3年に一度の「エネルギー基本計画」改定作業をしている。前回計画は、2030年の電源構成を、再生エネ(水力発電を含む)22~24%、原子力20~22%、火力56%とした。今回のこれまでの議論で、再エネを「主力電源」と初めて位置づけ、最大限導入していく方針を打ち出すと同時に、原発については引き続き「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付け、全体の目標数値は現行計画を維持することになった。今後、詰めの議論を進め、18年夏を目標に「基本計画」の改定版を閣議決定する。
他方、「懇談会」は2050年と、より長期の国のエネルギー戦略を議論しているもので、18年4月に提言をまとめ、「基本計画」に反映させる。30年までの政策の方向性を示す基本計画の、さらに先をにらんだ政府戦略となる。3月30日の懇談会の第8回の会議から提言とりまとめの議論に入った。
経産省の素案は、一言でいうと、「基本計画」同様に再エネを主力電源化する一方、原発は温室効果ガス削減のための「選択肢」とし、依存度を下げつつ温存する方針を示している。具体的に、再エネが価格低下などによって「主力化への可能性が大きく拡大している」と位置付けている。ただ、天候などにより発電量の変動が激しい点などが課題だとして、蓄電池や水素技術の革新、ITによる電力システム刷新、再生エネを受け入れられる送配電網の整備や効率化などを挙げている。原発については、「脱炭素化の選択肢」として、人材や技術維持に取り組む必要性を明記。火力発電など化石エネルギーは「過渡期における主力」としつつ、非効率な石炭火力などを順次廃止する考えを示した。電源構成などの数値目標は盛り込まない。
「20%」のためには30基程度の再稼働が必要とされる
経産省はこうした議論の流れに沿って基本計画改定を進めるが、相変わらず、数字の実現性、課題の解決にはほど遠いものになりそうだ。
原発比率20~22%の実現性は相変わらず、全く見通せない。現在、稼働する原発は7基、原発比率は2%に過ぎず、20%のためには30基程度の再稼働が必要とされる。経産省は基本計画の議論の過程で、「稼働中の7基に加え、設計変更許可を取得した7基、新規制基準への適合性審査中の12基が将来稼働すれば、22~20%を達成することも数字上は可能」と説明しているが、その実現性を素直に信じる人は電力業界でもまずいない。
「本気で20%を目指すなら、新増設が必須」(業界関係者)だが、今回の「長期戦略」では安全性の高い原子炉の開発や人材育成に取り組む必要性に触れるが、新増設や建て替えの直接的な表現は見送られる見通しだ。
原発維持派の日経新聞の社説(4月2日)も「化石燃料への過度の依存から一段の再エネ重視へ。その方向性は評価したい」としつつ、再エネ拡大にむけ、「必要となる技術や資金をどう確保していくのか。国が見取り図を示すことが大切だろう」と求める一方、原発20~22%の目標について「目標が現実的なのか、これからも点検が必要だ。原発が安いとしてきたコスト神話も説得力を失っている」と、きつめの指摘をする。「基本計画」の数値目標を維持するという現在の議論の『突っ込み不足』に疑問を呈しているものだ。
夏の「基本計画」改定までに、こうしたモヤモヤが解消するのは難しく、脱原発と原発維持・推進という二つの立場の溝は容易に埋めようがなさそうだ。