「20%」のためには30基程度の再稼働が必要とされる
経産省はこうした議論の流れに沿って基本計画改定を進めるが、相変わらず、数字の実現性、課題の解決にはほど遠いものになりそうだ。
原発比率20~22%の実現性は相変わらず、全く見通せない。現在、稼働する原発は7基、原発比率は2%に過ぎず、20%のためには30基程度の再稼働が必要とされる。経産省は基本計画の議論の過程で、「稼働中の7基に加え、設計変更許可を取得した7基、新規制基準への適合性審査中の12基が将来稼働すれば、22~20%を達成することも数字上は可能」と説明しているが、その実現性を素直に信じる人は電力業界でもまずいない。
「本気で20%を目指すなら、新増設が必須」(業界関係者)だが、今回の「長期戦略」では安全性の高い原子炉の開発や人材育成に取り組む必要性に触れるが、新増設や建て替えの直接的な表現は見送られる見通しだ。
原発維持派の日経新聞の社説(4月2日)も「化石燃料への過度の依存から一段の再エネ重視へ。その方向性は評価したい」としつつ、再エネ拡大にむけ、「必要となる技術や資金をどう確保していくのか。国が見取り図を示すことが大切だろう」と求める一方、原発20~22%の目標について「目標が現実的なのか、これからも点検が必要だ。原発が安いとしてきたコスト神話も説得力を失っている」と、きつめの指摘をする。「基本計画」の数値目標を維持するという現在の議論の『突っ込み不足』に疑問を呈しているものだ。
夏の「基本計画」改定までに、こうしたモヤモヤが解消するのは難しく、脱原発と原発維持・推進という二つの立場の溝は容易に埋めようがなさそうだ。