ハリル解任、日本サッカー協会の「致命的欠点」露わに 長期戦略の欠如、会長発言も「時代遅れ」

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   バヒド・ハリルホジッチ監督の電撃解任のタイミングをめぐり、その2週間前に日本サッカー協会(JFA)では大きな動きがあった。田嶋幸三会長の再任だ。

   サッカーライターの清水英斗氏は、「タイミングが良すぎるのは気がかり」と指摘した。J-CASTニュースが取材すると、JFAの体質について「中身はスカスカです」と厳しい言葉を投げかけた。

  • 日本代表監督を解任されたハリルホジッチ氏(2016年8月撮影)
    日本代表監督を解任されたハリルホジッチ氏(2016年8月撮影)
  • 日本代表監督を解任されたハリルホジッチ氏(2016年8月撮影)

「タイミングが良すぎるのは気がかり」

   田嶋会長は2018年4月9日の会見で、ハリルホジッチ監督の7日付での解任と、西野朗・技術委員長の新監督就任を発表。「(3月の)マリ戦とウクライナ戦の後、選手との信頼関係・コミュニケーションが多少薄れてきた。その中で今までのことを総合的に評価し、この結論に達した」としたが、ロシア・ワールドカップ(W杯)を2か月後に控えるタイミングで解任するにしては、説明が不十分という印象を与えた。

   決断のきっかけになったとしたマリ戦は3月23日、ウクライナ戦は3月27日に行われた。一方、その間の3月24日、JFAの理事会で田嶋会長の再任が正式に承認されている。任期は2年。

   会長再任直後の監督解任は偶然なのか。サッカーライターの清水英斗氏は4月10日付のネットメディア「レジェンドスタジアム」の記事の中でこう言及している。

「なぜ、サッカー協会で選挙が行われ、田嶋会長の再任が3月に決まった、その翌月なんだろう。もっと早くに解任していたら、新チームがうまくいかないとき、大批判が起きたとき、その決断の責任を田嶋会長が問われただろうか。それは選挙のリスクになっただろうか? 逆に今の解任ならば、ロシア大会が惨敗に終わっても、新監督を迎えて、1年半は任期の猶予がある。タイミングが良すぎるのは気がかりだ」

   J-CASTニュースが11日、清水氏に改めてこの真意を取材したところ、「実際、会長選にそれほどの影響はないと思います。よほど世論が紛糾したら、わかりませんが、可能性は低いと思います」としながらも、

「ただ、それを田嶋会長が考慮した可能性はあります。慎重で立ち回りのうまい人だと、よく耳にするので」

と述べる。

「強豪国がやっている『当たり前』から、今の日本サッカーは非常に遠い」

   ハリルホジッチ氏が就任したのは15年3月。招聘に大きく関わったのは、当時の霜田正浩・技術委員長だった。技術委員会は日本代表チームのマネジメントを担う。新監督発表会見に臨んだのも霜田氏と、当時専務理事の原博実氏だった。

   だが16年3月、会長選挙で原氏が田嶋氏に敗れると潮目が変わる。霜田氏は技術委員長から同委員に降格し、委員長の後任には西野氏が抜擢された。ハリルホジッチ氏にとって「相棒」だった霜田氏は、16年11月にJFAを離れることを決断。メディアでは「ハリル監督困った...霜田技術委員が辞任 本音で付き合える理解者失う」(サンケイスポーツ16年11月19日付)などの見出しで報道された。

   就任当時と解任時点で、ハリルホジッチ氏を取り巻くJFAの陣容が異なるのだ。とはいえ、清水氏は「担当者が変わったので、引き継いだ人には責任がない、という理屈は通らないです。そんな理屈が通れば、その組織は外部への信頼を失います。実際、今は失っているわけですが」と皮肉を交え、

「人によってコロコロ変わる。W杯ごとに、考え方が右端から左端へぶれる。組織としての長期戦略の無さは、日本サッカー協会の致命的な欠点です。今までも欠点、これからも欠点。スローガンだけは、2050年までにW杯優勝と言っていますが、中身はスカスカです」

と、JFAの体制を批判した。

「ハリルホジッチの戦略は、つまらなくても実戦的」

   田嶋会長は今後の方針として、「日本らしいサッカーが確立されてきており、それを志向してほしい。しっかりボールを繋ぐということだ」と、ボール支配率を高めるポゼッションサッカーを思わせる発言をした。ハリルホジッチ氏が目指した堅守速攻のカウンターサッカーとは、真逆と言える。

   この点、清水氏は取材に対し、ハリルホジッチ氏と田嶋会長との間に「齟齬はあったと思います」とする。「ハリルホジッチのやり方でW杯優勝できるのは、体格的に勝るフランスやドイツくらいでしょう。その方針で、日本がW杯優勝できるとは思いません」としつつも、

「W杯ベスト8が目標なら現実的なプランです。サッカーは守備優位のスポーツなので、守備から入るハリルホジッチの戦略は、つまらなくても実戦的」

と理解を示す。

   逆に「田嶋会長の言う日本らしいサッカーとは、しっかりボールをつないで、しっかりカウンターを食らうサッカーです。現状では。サッカーは攻防一体なので、ボールを奪うことの確立なしに、ボールをつなぐ云々を話すことはできません。奪い返しやすいつなぎ方、つなぎやすい奪い方、あるいはカウンターしやすい奪い方、そういうアイデアが必要です」としたうえで

「田嶋会長の発言は、時代遅れ感がありました」

と批判的だ。

   先行き不透明な日本代表について、清水氏は

「10年スパンで長期方針を立てて育成をすれば、A代表の姿は自ずと決まるはず。あとは相手の長所、弱点を踏まえて戦えばいいだけです。そういう強豪国がやっている『当たり前』から、今の日本サッカーは非常に遠い所にいます。それを明らかにした解任劇でした」

という見解を示していた。

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